先日、巣箱を移動する時期について質問させていただいたのですが、多くの回答をいただき、それを踏まえて質問の件とは別の群、松虫寺群の移設を昨夜行いました。この群は3段目まで成長していてある程度安定していた群なので、問題なく作業を完了することができたのですが、移動する際の振動によって蜂がどれくらいのストレスを受け、どれくらい興奮するのかを調べることが今回の目的でありました。少しでも作業がスムースに行われるように、今回はいくつかのの工夫をしました。
追い上げ箱の設置
この時期、夜でも蜂は巣門付近に降りてきて涼んでいたりします。私の群はハイブリッドに使っていた樹洞巣門をそのまま残しているため、運ぶ時にはそれが邪魔になりますので事前に撤去し、その代わり移動する夜に作業がうまくいくように追い上げ箱(と命名)を下に設置しておきます。これは箱の前面が取り外せて全開放できるようになっている箱で、天板部分には蜂が通れない細かさのトリカルネットが張ってあります。サイズは重箱の内寸と同じになっています。
この解放された部分からブロアーを下から上に向けて風を送り、巣門箱などに張り付く蜂を巣板に退避集中させ、移動する巣箱をできるだけコンパクトにすると同時に、取り残す蜂をできるだけ少なくするために考えたものです。ブロアーで吹き上げたあとは上にある巣門箱の上で切り離し、あらかじめ制作しておいた「金網箱」の上にセットします。
温度センサーの設置
運び出す直前に2段目の最も蜂が密集している場所に穴を開け、そこに温度センサーを突っ込みました。センサー温感部の1センチくらいが巣箱内部に侵入する格好なので、巣板中央部の温度は測れませんが1つの目安にはなると思いました。このセンサーはセンサー温感部と外気温を画面上で比較して表示されるので便利です。運搬中の最大値は車に積み込んだ直後で26.3度でした。冷房の効いた車内は18.3度を指しています。車の揺れよりも手で運ぶ振動の方がより温度が上昇するようです。
金網箱を制作
運ぶ際のストレスで箱内部の温度が上昇するのをできるだけ防ぐために通気を良くするために、運搬時に最下段に設置する箱です。東西南北4面には金網付き窓を付け、底面にもパンチングメタルを取り付けて、下駄状の足を取り付け、車のシートに置いた時に下からも空気が入るようになっています。ちなみに重箱の最頂部は天蓋を外しスノコの上に枠付きトリカルネットを張って、スノコの隙間から熱気が全て逃げるようにする作業を昼の間にやっておきました。金網箱から入った空気が上部スノコから抜けると、重箱が煙突のように熱気を排出してくれます。移動中、クーラーを効かせ密閉された車内はミツバチの匂いが充満していました。
側面に取り付けられた紐付きの白い物体は穴のフタで、万が一箱に入らなかった蜂を捕獲し、この穴から中に入れます。捕獲の仕方は下の写真のような捕獲の道具を使います。アクリルパイプに網戸の網を被せたシンプルなもので、金網部に口をつけて蜂を吸い込み、箱の白キャップを外してアクリルパイプを入れて優しく蜂を吹き込みます。埃が多い部分で蜂を捕獲しようとすると埃が肺に入ってむせてしまいます。また強く吸いすぎると蜂が網に激突するので吸うときも吹くときも加減が重要です。
ハイブリッドと追い上げ箱のすげ替えは日中、移動の当日に行いました。撤去したハイブリッドには多くの蜂が残り、撤去して少し離れた場所に持っていっても帰巣した蜂が巣箱の位置には来ないで離れた場所に置かれたハイブリッドに戻ってくると言う、不思議な現象も目にしました。位置情報だけでなく、慣れ親しんだハイブリッドの匂いにも引き寄せられて戻ってしまうと言うことが明らかになりました。しがみつく蜂をブロアーで吹き飛ばし、速やかにさらに離れた場所(20メートル)に持っていくと、もう蜂は来なくなりました。
移動作業は夜の9時に開始しました。全ての作業はスムースに行うことができました。車は冷房をガンガン効かせ、1時間半かけて移動しましたが、異常な高温になったりするようなことはありませんでした。みんなおりこうちゃんでした。全ての作業が完了したのは午前0時で、犠牲になった蜂はゼロでした。
横に置かれた黒いコンテナは水場です。板を浮かべて苔を乗せ、水質を保つために布袋草を入れています。
パンチングメタルを開くようにしたのは、移動設置先に置く時点でもしも蜂が興奮し、巣門箱に載せ替えることができない、もしくは金網箱の中で蜂が出たがって大騒ぎになった際に、夜間に開けたりすると知らない土地で夜間に飛び出して戻れなくなると困るので、設置後すぐには解放せず、朝になったらパンチング底板をその場ですぐに解放できるようになっています。