はじめに。この日誌の中では、メントールの取り扱いについて触れておりますが、養蜂振興法では、治療薬としてのメントールは承認されておりません。又、使い捨てカイロの使用方法にしても用途以外での使用です。いずれも個人の自己責任で使用しております。決して使用をお勧めするものでは無い事をご理解願います。
メントールが昇華する為には16℃以上が必要と言われています。しかし、冬季になると、巣箱内の温度は低くなり、当蜂場でも12月1日時点、スノコ上で11℃程度でしたので、メントールの昇華は期待出来ないものと思われます。従いまして、この環境下でメントールを処方しても、予防や治療の効果は非常に低いと考えられます。反面アカリンダニは、越冬時に蜂球を形成し密になった蜜蜂の体内を移動しながら繁殖して、群内感染を拡大すると思われます。毎年、春を前にして群の消滅が多く報告されていますが、その一因の様にも思われます。
この状況を、使い捨てカイロの発熱を利用して改善できないかと思い付き、カイロの発熱温度を測ってみました。測定の結果は、表面温度で最高47.6度と、メントールが液状化すると言われる42℃を上回り、昇華量も著しくなり、危険な温度域だと考えられます。
安全に処方する為に、最高温度を30℃程度に抑える事が出来ないかと実験を行ってみました。結果、2通りの方法で、期待値に近い結果を得る事が出来ました。
方法は、某ホームセンターの「貼らないカイロ」を使用しました。使い捨てカイロの袋には不織布が使われている様ですが、一面には「この面を外側にして下さい」と印刷されています。どうやら、この面から空気を取り込んで発熱している様です。そこで思い付いたのは実に簡単な次の2通りの裏技でした。
裏技1:「この面を外側にして下さい」と印刷されている面を下側にして、空気と接触しないようにしました。
裏技2:「この面を外側にして下さい」と印刷されている面を上側にしてガムテープを貼り、ガムテープの幅の分だけ空気と接触しない様にしました。
其々1時間毎に表面温度を測定し記録しました。その結果は、次のグラフの通りです。
どちらの方法も安全な温度範囲内に収まり、20℃以上の発熱も38時間迄は、持続する事も確認しました。
飼育群の2群に対して、2通りの裏技にて、使い捨てカイロ上にメントールを乗せて処方してみました。24時間以上経過しましたが、群れには特に変化は見られませんでしたので、大きな問題は今の所無さそうです。
いずれにしても、養蜂振興法で承認されていない薬剤を使用するのは違法となりますので、自己の責任に於いて使うしか他ありません。食品添加物として知られ、人体や蜜蜂に害が少ないと考えられるメントール、又は、その他の有効な方法が、早期に承認されることを願いたいと思います。