昨日に続き、蝋型鋳造についてお届けします。
残念ながら昨日の蝋型の鋳込みは動画を撮るのを忘れてしまい、別の時の鋳込みの模様を見ていただきたいと思います。「光る水」の素晴らしさは何度見ても感動します。
「興奮の坩堝」という言葉がありますが、覗き込むとそこはまさに言葉ピッタリの世界です。サングラスのように色がついた防災面でないと眩しくて見えないのですが、湯面(ゆづら)は鏡のように平らで表面にはキラキラと光る妖精たちが走っています。1400度の物体が至近距離にあると着ているものが自然発火してしまうので、湯の汲み出しは消防服を着て行います。メガネをしている人は金属のフレームが頬に当たると火傷してしまいます。それくらい日常では体感できない熱さです。
「チョコ坩堝」と言う汲み出し専用のどんぶり形状の坩堝を長いヤットコ(火箸)で咥えて中の湯を汲み出します。汲み上げた時に火箸が緩んでチョコが落下すると大変なことになるので、炉のふちなどにぶつけないように慎重に汲み出すのですが、ゆっくりやりすぎると湯の温度が下がって、鋳型に注ぐときの適性温度を下回ってしまうので、慌てずに同じリズムで汲み続けます。チョコで汲む湯は1杯5キロ、6〜8杯汲みますのでとりべは二人で持ち上げます。
とりべに汲み出す直前に一斗缶から投げ入れているのは藁灰で、藁の灰は高温で飴状になり、湯面をコーティングして金属の酸化を一時的に防ぎ、湯面に浮かぶゴミなどを絡め取ってくれます。途中、火箸を交換しているのは火箸が加熱によって柔らかくなり、チョコをしっかり掴めなくなるので予備の火箸を準備しておきます。
注ぐ瞬間は途中で湯を途切れさせてしまうと、鋳型の中で湯境ができてしまうので、直径3センチくらいの太さを維持して勢い良く流し込みます。勢いをつけ過ぎて湯が外に出ると飛び散って来ますので的を外さないように、注ぐ時のとりべのスタート位置が重要です。鋳型の中央に大きな漏斗状の凹みがあり、そこが湯口です。湯口の周囲に点在する小さな穴は「上がり」と言う湯道で、湯口から入った湯が作品の中を満たし、最後に湯が上がってくる出口です。途中で冷えて固まってしまったりすると上がりから上がって来ないので失敗になりますが、この時は全ての型から綺麗に上がって来たのでうまく行きました。
以下の動画は湯口に注ぎ込んだ直後で、ゆっくり冷えて固まって行く様も美しいです。
流し込んだ金属は完全に冷えないと脆いので、鋳型を壊すのは翌日に行います。鋳型はクッキーのようにサクサクと柔らかく、ヘラなどで崩しながら作品とのご対面に胸が高鳴ります。画面下に作品の端っこが出て来ました。人物にちゃんと湯が行き届いているかちょっと心配です。
石膏の中から顔が出て来ました。ちゃんと入っているようです。
全貌が現れて来ました
どうやら成功のようです!人物の頭にくっついた「上がり」もちゃんと入っていました。作品の中が全て湯で満たされ、最後にこの上がりを伝って来るのです。
あとは湯道を切ったり細かいところのバリなどを除去してワイヤーブラシをかけたり、部分的に磨いて真鍮の金色を出したりして仕上げをします。
タイトル「雨・好日」
雨降って花ほころび、蜜流れて、今日もミツバチたちは皆元気です
・・・・という情景を表現したかったです。養蜂家の方は寡黙で牧歌的で、絵になる男でした。
プレゼントしたらとても喜んでいただけたようでした。これからも仲良くお付き合いしていただきたいと思います。
次回、もう一つの日誌で完結です♪