ニホンミツバチに喜んでもらうためにはどうすれば良いのか?と自問自答しながら蜂と付き合ってきましたが、現時点での結論として3年前から試験的に設置し、今年は自宅を除く全ての蜂場でこの巣箱に切り替えました。
樹種は左から、モミジ、モミジ、モミジ、ケヤキ、シイ
↑このシイの樹洞はかつてキイロスズメバチが営巣していた履歴があり、ミツバチが嫌う可能性アリ。下の写真は切った時に撮影したキイロの巣↓
今回、初めから重箱を乗せたものと、ベニアで蓋して入居後に箱を乗せるもの、2種類を試す
現在私は自宅以外に7ヶ所の蜂場があるのですが、全ての蜂場を1群限定にしました。
中が最初から抜けた自然樹洞を利用します。これは待ち箱ではなく飼育箱です。上は重箱のサイズに合わせたスリットスノコの加工をしたコンパネを天板とします。スノコの上には重箱を一段乗せ、メントールを入れる空間として、側面には蝶番付きの扉を付けます。
中は自然の樹洞をそのまま残します
下は厚さ5ミリの小板を挟んで鉄板の下からM10ボルトで止めるので、重箱で言うところの「4面巣門」、つまり360度巣門になります。
カミキリ幼虫が開けた穴や自然に開いた穴を巣門とします。大きすぎる入り口にはステンレス2ミリ線で格子にして、スズメバチが入れないようにします。鉄板の下はスライド式の底板を入れ、掃除と内検撮影ができるようにします。
格子はステンレス線をかすがい状にしたものを下穴1.5φを開けてから打ち込む
大きすぎる穴は
このようにステンレス板で6ミリの隙間を作る
自然樹洞は内壁に「フケ」ている層が存在します。これは爪で引っ掻いてボリボリ削ることができる組織で、これが自然樹洞の最も優れた点です。この材質が内部の調湿機能と断熱機能を兼ね備えています。杉材でこしらえた巣箱ではどうしても実現できない。何かそう言う素材を内側に貼り付けることも出来なくもないですが制作にすごい手間がかかります。樹洞の内部は複雑で隙間やひび割れだらけなのでスムシの温床になりますが、森の自然巣で暮らすミツバチは数万年それで暮らしてきたので、群が元気ならスムシは恐れることはない。スムシに負けるのは調子を崩した群が数を伸ばせなくなった後の最後の結果です。
「重箱式巣箱」はニホンミツバチの習性--------貯蜜層が一番上にある、それを切りたい、巣が落ちる、そして取りすぎないように面積を狭くし、縦に長い巣を作らせる・・・と言うことだと思うのですが、床下や天井裏、ピザ窯などの広い開放空間に営巣する群は重箱の面積よりも広い裾野を持ち、どの群も大きく育つ事例をたくさん見てきました。群がなかなか大きく育たない理由は、空間が狭いからではないか?確かな科学的根拠はないけれど、床下の弱小群なんて一度も見たことがない。
つまり、際限なく大きな空間が与えられたら、蜂は伸び伸びと巣作りができる。群が健全であれば(スタート時の蜂数にもよるが)これくらいのサイズが普通なのではないか。
私は蜂の飼育の仕方で迷った時は、森の自然巣の環境を思い浮かべます。答えはそこにあると思うからです。最もストレス無く元気に暮らしてもらうために、巣箱はどうあるべきかと考えた結論です。
ハイブリッドの待ち箱を設置し、蜂が樹洞の穴を出たり入ったりしている様子を眺めるワクワク感は体験したことのある方ならみんなご存知だと思います。めでたく入居した後、ハイブリッドを撤去して重箱だけに変える時に、いつも罪悪感を感じていました。なんか詐欺みたいで。。。スズメバチが来る時期までできるだけ長くそのまま飼育してたりして、このままずっと飼育を続けられないものかなぁと考えていました。
もうひとつ、このシステムにしようと考えた最大の理由があります。私は蜂毒アレルギーで救急病院に担ぎ込まれたことがあるのですが、あと1回刺されたら死ぬことがわかっています。
しかし養蜂をやめるという選択肢はありませんでした。それならば、どうしたら刺されるリスクを減らすことができるか必死で考えました。唯一の対策は「巣箱に近づかないこと」でした。「完全放置型巣箱」で飼育すれば刺される確率が革命的に減ります。5メートルくらい離れたところから眺めていても、幸せな気分は損なわれないことがわかりました。継ぎ箱をしないで済む巣箱、容積を広くすれば掃除も必要ない。(スライド式底板はある)巣落ちしない設置環境を選んでおけばその対応に追われることもない。タンカンを地中深くに4本刺して、どんな巨大な台風が来ても安心できる構造にする。スズメバチが絶対に入れない工夫だけして、あとはアカリンダニに対応する準備だけしてあれば、巣箱に近づいて作業する機会は草刈りくらいで済ますことができます。
皆さんがニホンミツバチを飼育する最大の理由、「採蜜」これは我慢しようと。
それじゃあ意味ないじゃん!と言われてしまいますかね。でも、重箱で何群も管理しても、その中で採蜜できる群はごくわずかです。私は4段5段では採蜜する気が起きない。少なくとも6段で、持ち上げられないくらい重くならないと採蜜はしてきませんでした。10群管理しても1群採蜜できるかどうかと言う状況が何年も続いています。それは自然環境、温暖化で花の流蜜不足など、原因はわかりませんが、ギリギリで生き延びている群から蜂蜜を奪うことは私にはできませんでした。幸い豊かな環境でたくさん飼育している蜂友さんが大勢いますので、販売している人から買えば良いじゃないかと。金で解決できる問題じゃないかと。
上に一段、重箱を乗せていますが、群が大きく育って、盛り上げ巣を作ってくれたらそこから採蜜できるかもしれません。盛り上げ巣には産卵しないし、「盛り上げ巣は余剰分の貯蜜である」と言う説があり、それが本当かどうかこれから検証して行きたいと思います。
いくつかの懸念される問題を克服して持続可能養蜂を「安全に」楽しむために、今のところ行き着いたスタイルです。ニホンミツバチは野生種で、世話とか管理とかではなく、野性の昆虫にただ勝手に住んでもらうだけと言うこと。「気に入ってくれますか?良かったら使ってください」と言って設置してみたいと思います。