ログインまたはユーザー登録してからコメントしてください

ログインまたはユーザー登録してからいいね!してください

> 広告を非表示にする方法はこちら
パスワードを忘れた場合のバックアップとしてラインの友達追加をおすすめします こちら

ニホンミツバチ
ミツロウの使い道 その1

はっちゃんさっちゃん 活動場所:千葉県
初めまして。名前の最後に「さん」はいりません。打つのが大変だから「はっちゃんさっちゃん」でお願いします。6年目の初心者ですが、どうぞよろしくお願いいたします。
投稿日:2023 3/10 , 閲覧 639

皆さまちょっとご無沙汰しておりました。分蜂も秒読みに入ってまいりましたね。

採蜜や消滅・逃去の際には蜜蝋が手に入ります。蜜蝋は待ち箱に塗ることで蜂の入居率を格段に上げると言われていますが、ハンドクリームや蜜蝋ラップなど、ミツバチの飼育以外でも生活を楽しく豊にしてくれる素材である以外に、蜜蝋は蜂蜜と並んで人類の歴史の最も最初の頃から利用されて来ました。水気を跳ね返すその性質から家具や革製品などの保護、ろうそくとして照明にも使われて来たし、染色や陶芸など、工芸品の製作にも必要不可欠な素材として文明の発展を支えてきてくれた素材です。

その中で特に革命的な大発見、金属の使用に貢献した素材として、日本では飛鳥時代より金属製品を作る上でなくてはならないものでした。蝋型鋳造(ロストワックス)と言って、原型となる形を蝋細工で作り、それを土で覆って鋳型を作ります。その鋳型を窯に入れ、1日以上焼いてあげると中の蝋が熱によって溶けて、さらに加熱することで燃え尽きて、そこに空洞ができます。その空洞に溶かした金属を流し込む。それが蝋型鋳造です。

今から6年前に我が庭に設置してあったピザ窯に偶然ミツバチが入居してくれたことをきっかけに私のミツバチライフは始まりましたが、自分で飼育したミツバチの蜜蝋を使って自分の作品を作りたいということが、彫刻家である私の夢となりました。ある程度まとまった量が必要なので毎年少しずつ集めて、いつかそれで作品を作ってみたいと思ったのです。それまでは中国産の蜜蝋を購入していたのですが、ニホンミツバチの蜜蝋は伸びが良く手離れも最高で、良いものが作れそうだなぁと楽しみにしておりました。

養蜂を始めると地域で活動している他の飼育者の方との情報交換などもできるようになり、受粉交配用にセイヨウミツバチの群をハウス農家に貸し出すことを生業としている養蜂家の方と知り合うことができました。ニホンミツバチとセイヨウミツバチは飼育の仕方などに少しの違いがありますが共通する部分も多く、その養蜂家の方からは多くのことを教えていただきました。自分の仕事のために蜜蝋を少しずつ集めているんですと何気なく話したら、何かに使えるかもしれないと毎年蓄えて来たけれど、そう言うことなら君にぜひ使ってもらいたいと言われびっくりしました。車で取りに来いと言われ、行ってみたら物凄い量の蜜蝋が。。。200キロくらいありました。

全部タダで良いと言われ戸惑ったのですが、それならばこの蜜蝋を使って記念となる作品を作り、彼にプレゼントしようと思いました。以下はその作品を作る制作工程となります。

少し長くなるけれどお付き合いください。

鋳物は原型がひとつあればそれを量産することができる技法ですが、雌型に蜜蝋を張り込む方法と、蜜蝋を直接いじって作る”手びねり”と言うやり方があり、前者は石膏で作った雌型にパラフィンを添加して溶かした蜜蝋を刷毛で塗って厚みを付けるのに対し、手びねりでは松ヤニを混ぜると粘土のように可塑性が良くなり、手によって造形される形をそのまま作品の原型とすることができるため、今回は「手捻り」で作ることにしました。手捻りは作った原型が鋳型の焼成の際に溶けて消失して代わりに金属に置き換わるため、そのかたちたったひとつ、世界に一つだけの作品となります。

シリコンを吹き付けたガラス板の上に溶かした蜜蝋を流して、蝋の板を作り、それを土台(地面)としてその上に風景を作ることにしました。松ヤニが添加されているので色が茶色っぽいです。この蝋型原型を耐火石膏に埋没して鋳型とします。これを石膏鋳造と言って、ルネサンス期にイタリアで発展した技法です。


[image="https://d3dlv5ug8g5jts.cloudfront.net/091/9148078022611218533.jpeg"]


蝋型原型が完成したら、その原型に「湯道」と言う蝋の棒をハンダごてで溶かして接着します。この湯道は溶けた金属が作品に流れ込むために必要です。右側に見える黒くて太い湯道から金属が流れ込み、作品を満たした金属が最後に青い湯道から登ってきます。

ブリキを巻いた筒の中に原型をセットして石膏を流し込み、作品と一体化した湯道全てを石膏に埋没します。

[image="https://d3dlv5ug8g5jts.cloudfront.net/177/17784856802422783755.jpeg"]


石膏で作った鋳型を、耐火煉瓦を築いて窯を作り、その中に並べて丸一日かけて灯油バーナーで焼成します。窯の内部は700度くらいになります。


[image="https://d3dlv5ug8g5jts.cloudfront.net/057/5706847693814969168.jpeg"]


[image="https://d3dlv5ug8g5jts.cloudfront.net/102/10210462358643811171.jpeg"]


焼成が終わって窯を崩し、中から繭のような鋳型が出て来ました。この鋳型の中は先ほどの蝋原型と湯道が複雑なトンネルのような空洞になっているはずです。この時は仲間の作品も一緒に鋳造したので、鋳型は6個になりました。限りなく水分がゼロに近い状態です。もし鋳型に水分や蝋分が残っていると、湯を注いだ時に(溶かした金属の事を「湯」と言う)大爆発を起こして大変危険です。

[image="https://d3dlv5ug8g5jts.cloudfront.net/138/13868892608268435918.jpeg"]


鋳型を土間に埋めて、鋳込みの準備完了です。上部に「湯口」と言う、金属を流し込む注ぎ口が開いていますが、砂が入らないように蓋が乗せてあります。

[image="https://d3dlv5ug8g5jts.cloudfront.net/051/5175464684961362278.jpeg"]


いよいよ金属を溶かします。今回は真鍮で作るので、坩堝(るつぼ)の中には真鍮の地金を入れてあります。コークスが燃料で、炉の中は1400度くらいになります。炉の上にバケツのようなものが被せてありますが、これは「とりべ」と言って、このバケツに湯を汲み出して鋳型に注ぎ込みます。汲み出した湯が冷めないようにとりべを炉の上に乗せて加熱しています。

[uploaded-video="bc687800be6911ed8ea1c3d85fb0352a"]


お話の続きはまた明日♪

コメント18件

蜂三朗 活動場所:千葉県
投稿日:2023 3/10

はっちゃんさっちゃんさん、今晩は。 銚子市の蜂三朗と申します。

明日が楽しみです。蜜蝋200kg.有難いですね。私も昨日、今日と蜜蝋だらけになって、抽出してました。

大変興味ある、危険も伴う作業、芸術作品が出来るのでしょうか。

完成品、拝見したいですね、宜しくです。

はっちゃんさっちゃん 活動場所:千葉県
投稿日:2023 3/11

蜂三朗さん、こんばんは。

久しぶりの日誌ですがコメントありがとうございます。このような蜜蝋の利用方法もありますといつかご紹介したいと思っておりました。

ハッチ@宮崎 活動場所:宮崎県
投稿日:2023 3/11

はっちゃんさっちゃんさん、おはようございます!

なるほどそうなるのか、そう使えばいいのか とよく理解出来る工程詳細です。

しかし、頭で理論理解出来るとしても実際にやるとなると作業だけでなく熱さなどそれ以外の場面に出くわしなかなかなものなのでしょう。

作品が完成した時の感動が目に浮かびます(^^)/

テン&シマ 活動場所:広島県
投稿日:2023 3/11

200キロ近い蜜蝋ですか、良かったですね~。

ところで西洋ミツバチと日本ミツバチの蜜蝋では、どんな違いが有るのでしょう?あっそれと同じ西洋でも、中国産と国産の蜜蝋にも違いを感じられますか?

はっちゃんさっちゃん 活動場所:千葉県
投稿日:2023 3/11

ハッチさんおはようございます。

そうですね〜 熱さプラスこれに重さが加わります。重いけど熱いから「遠くの重いもの」を持ち上げるのがしんどいです。

手捻りの蝋型は失敗したら原型は溶けてしまって無いですから、一発勝負なので作業は慎重に行なっています。長い工程を経て最後に失敗するとまた最初からやり直しなので、鋳込みの瞬間は作業というより儀式のような感じです。

はっちゃんさっちゃん 活動場所:千葉県
投稿日:2023 3/11

テン&シマさん、お久しぶりです。

さっき見直したら、大雑把ですが500キロ近くありました。一生分あります。

しかし。。。実はニホンミツバチの蜜蝋に敵う蜜蝋はありません。今回の日誌は3話あるのですが、最後にテン&シマさんにも登場していただきたいと思います。

たまねぎパパ 活動場所:兵庫県
投稿日:2023 3/11

こんにちは

お久しぶりです。

職人の技、ドキュメンタリーですね。

蜜蝋500kgとはどれだけの量か想像つきません。(^^ゞ

ハニービー2 活動場所:茨城県
投稿日:2023 3/11

はっちゃんさっちゃんさん、こんばんわ

彫刻家さんだったのですね!ビックリです。

ともしび隊の救済のころから楽しく読ませて頂いております。文才もおありの様で、工程が良く分かります。作品出来ましたらUPください、写真だけでも拝ませて頂きますので・・・

まーや 活動場所:三重県
投稿日:2023 3/11

今晩は!

お久しぶりです^ ^お元気そうで〜ご活躍、嬉しいです!!一生分?の蜜蝋…想像が出来ませんが、譲って下さった方とのご縁も〜蜂さん達のお陰ですねー♪テレパシーで熱意が〜伝わったのでは( ^ω^ )一発勝負…完成が楽しみですねー♪下さった方の笑顔〜もうすぐです(^^)v

kuni 活動場所:三重県
投稿日:2023 3/11

はっちゃんさっちゃんさん、こんばんは

昨年秋の正倉院展に蜜蝋が展示されていたのを思い出しました。

https://www.yomiuri.co.jp/local/kansai/news/20221009-OYO1T50017/

このやり方は、以前東洋ミツバチ協会の勉強会で教えていただいたことがあり、なんとなくイメージはもっていましたが大がかりでびっくりしています。

はっちゃんさっちゃん 活動場所:千葉県
投稿日:2023 3/11

たまねぎパパさん、こんばんは〜〜

養蜂家の方は蜜蝋の精製を一斗缶を使ったようで、一斗缶サイズ(7分目くらい)のブロックでトラックがいっぱいになりました。

はっちゃんさっちゃん 活動場所:千葉県
投稿日:2023 3/11

ハニービー2さん、こんばんは!

趣味の養蜂が仕事にも生きるとは想像していませんでした。しかしニホンミツバチの蜜蝋がどれほど貴重か良く知っていますので、ここぞという時に使おうと思っているのですが、勿体無くてなかなか使えません。

先ほど「その2」の日誌をアップいたしました。

はっちゃんさっちゃん 活動場所:千葉県
投稿日:2023 3/11

まーやさん、こんばんは!

養蜂家の方、そんなプレゼントがあることはお知らせしていなかったので、お渡しした時はとても喜んでくれました。こんな作品ひとつでは足りないくらいです。

はっちゃんさっちゃん 活動場所:千葉県
投稿日:2023 3/11

kuniさん、こんばんは!

ご無沙汰しております。記事、拝見しました。すごく具体的に詳しく書かれていて、大変勉強になりました。ありがとうございます。

奈良時代から行われていたことを今でも自分でやっていると考えるとなんか不思議な感じがします。当時と違うのは金属を溶かす際に鞴だったものが今は電気で回る送風機であることくらいです。もう一つ違うのは、その当時日本では鋳型を真土型(まねがた)、土で鋳型を作っていました。石膏を使うやり方はイタリア式です。

れりっしゅ 活動場所:千葉県
投稿日:2023 3/11

はっちゃんさっちゃんさん こんばんは。
青色申告がやっと終わり、じっくり読ませて頂きました~(^O^)
自分達で得た蜜蝋を使って、鋳造するって、ステキですね。蜜蜂は、悠久の昔から、人間の生活に深い関わりがあった。それが、甘味だけじゃなかったというのが、素晴らしい人間の知恵。とても勉強になります。
はっちゃんさっちゃんさんの流石の芸術的センス❣ 羨ましいですね~。
私にも何か出来ないかなぁ~って、とても真似できる事ではありませんけど、触発されます(●^o^●)想像するだけで楽しいです(^^♪

はっちゃんさっちゃん 活動場所:千葉県
投稿日:2023 3/12

ティーハウスれりっしゅさん、ありがとうございます。

人類の歴史は「これ、食えるかな?」で始まって進歩して来たように思います。「くさや」とか最初に口に入れた人って尊敬に値しますよね。食べてしまって生死を彷徨うような目に遭ってもアク抜きすれば大丈夫じゃね?とチャレンジし続けたり。そんな中で「これ、あれに使えないかな」と発見して少しずつ試して来たのでしょうね。

ティーハウスれりっしゅさんも類い稀なチャレンジャーですし、センスもあるから機会があったらやってみますか鋳物。

退会済みユーザー
投稿日:2023 11/8

はっちゃんさっちゃんさん  こんにちは! ロストワックスの言葉は聞いておりましたが、今回の説明で腑に落ちました!(^^)! 感謝!感謝!(';')

地球と人類の進化向上は《蜜蜂》と共に在り\(^o^)/ 実感できます

鋳型から取り出す光景を早くお見せくださいな、楽しみにしております。

はっちゃんさっちゃん 活動場所:千葉県
投稿日:2023 11/8

清爺 入居2023.5さん「地球と人類の進化向上は《蜜蜂》と共に在り」名言ですね。鋳型から出てくる場面は次の日誌です。↓

投稿中