投稿日:9/25 16:35
今年からセイヨウミツバチも飼っているんですが、生産性度外視で「自然巣だとダニが増えにくい説」が本当かどうか検証しています。
この説は、か式の岩波金太郎氏の「はじめての自然養蜂」や「ミツバチのダニ防除」の東繁彦氏のコラム(懐疑的ではある)で紹介されていて、私もかなり半信半疑なんですが、当地埼玉ではアピスタン耐性がすでにかなり高レベルで獲得されていて、最近はアピバール耐性も噂され、遅かれ早かれ新しいダニ対策が必要になるだろうとの考えのもと、検証してみることにしました。
検証開始から今まで、ダニ剤や有機酸、精油等は使ってません。オス蜂児切りは交尾オス用のA1以外は結構まじめにやりました。巣箱は全部自作で、標準サイズとか式、素材は杉赤身です。
種蜂導入は4月24日、3枚群2群(AとBとする)を購入しました。購入元では、昨年かなり耐性ダニ被害がひどく、2月に予約していたものが二カ月遅れの納品となりました。
5月~6月中旬の流蜜期に、Aは自然巣12枚、Bは自然巣6枚まで増えました。この時点で既存の巣礎枠はすべて廃棄し、完全に自然巣だけの状態になりました。自然巣への変換初期に想像以上にオス巣房だけが作られ続けたのはビビりましたが、後半は落ち着きました。AとBの差については、個体差かな?と思ってました。


6月23日にAをA1、K1、K2(Kはか式のK)に3分割し、BをB1、B2に2分割しました。K1とK2はそのまま変性王台で新女王を作り、7月15日にどちらも産卵確認、B2には購入した新女王を入れこの時点で5群となりました。

さらに7月下旬にA1を2分割しA1、A2に、B1とB2からB3を作り、計7群となりました。この時点で全群を腹側撮影法で検査したところ、A1、A2、K1、K2は0パーセント台、B1、B2、B3は2~3%でした。この時B2の女王をA2に移しました。またB1の女王はB3に移し、B1、B2は無王群となりました。

B3を作った段階で、B系統の群れのダニ率は結構高く2後半~3%だったため、B1、B2には、無王化から25日ほど経ち、有蓋蜂児が全くなく且つ新女王が産卵開始したくらいのタイミングで、か式群から借りてきた幼虫枠をトラップとして2枚づつ入れました。その結果、両群から大量のダニを捕獲することに成功。これを見て、自然巣ダニ減る説は眉唾かもしれないと心が折れそうになってました(笑)
ちなみにここで確信したのが、Bの元群は最初からダニが多かったから流蜜期の伸びが悪かったのだ!ということ。


B1、B2は各群とも5、6000匹くらいの群れだったと思いますが、各群から150~200匹ほどダニが取れました。蜂児が全部羽化するまでのタイムラグを考えても、腹側撮影法の数値はおおむね正確だったようです。
3パーセントといえども、こうしてみるとえげつないですねw
それから約一か月経ち、9月21日に全群でダニ検査をしました。





結果、A1、A2、B1、B2、K1、K2の順で、寄生率は1%以下、1%、1%、1%、3%、2%となりました。B3は事故で女王喪失中のため見てません。
興味深いのがA1で、この群は種蜂購入時から同じ女王で、オス蜂児トラップは5月~6月にそれなりにしましたが、7月からは交尾成功率上昇目的で半分くらいのオスを羽化させた群れでもあります。それでも1%以下に抑えられているのはすごいなと。おそらくなにかしらのダニ抑制要因を持っている系統と思われます。全群がこの群れだったら無農薬で全然やっていけそうです。
逆に、K1は3%、これはちょっとやばめな数値な気がします。埼玉ではたぶん後3サイクルくらいはダニ世代の回転があるはずで、世代増加係数を1.6としても、最大12%くらいに増えてしまうのではないかと思っています。もともとはA1と同時にAから分けだした群れなのに、女王の性質が違うとここまでダニ率に違いが出るようです。
9月下旬で3%というのが、金太郎さんの言う「自然巣ならダニが増えにくい」っていう説の安全域の範疇にあるのかはわかりませんが、これで冬に突入するのはどうなんだろうと思います。ちょっと怖い気がします。経験者の意見が聞きたいところ。正直、いまさらアピバールは使わないけど、乳酸ぐらいは使った方がいいかなとも思ってます。
そもそも金太郎さんの本のセイヨウミツバチのダニに関しての章はちょっと、ん?と思うとこがあったんですよね。まず、ダニ検査の光景として使われてる写真が、か式の連結枠で、これ、他の慣行養蜂家から標準ラ式群を買ってか式に移し替える段階の、か式飼育としてはごく初期段階のものなのでは?と思ったこと。さらに「オス蜂児のダニ寄生率10%!ドヤ!!」ってとこ。それふつうに多くない?って思ったんです。そして、セイヨウミツバチをか式で何年継続して無農薬でできましたみたいなデータが載っていないのも気になってました。とにかく数年分のデータで出してくれ!ってもどかしく思ってます(笑)
でもこれは希望的観測なんですけど、無農薬で飼うことにより、ハチの嗅覚や免疫が上がり、3%以上にはダニが増えないっていうこともあったりするのかもしれないと思ったりもちょっとしてます。(文面から不安がにじみ出すぎww)
まあとにかく、3%の群れはおそらく乳酸を使って対処すると思います。このまま放置してみたい気もするけど、盗蜂からの全群崩壊みたいになったら洒落にならないので。
他の群れはこのまま放置してみます。
おまけ
この3%の群のダニの増え方を計算してみました。6月下旬に母群Aから分けだした段階で推定0.5%のダニがいたとすると、30/6000匹=0.5%から240匹/8000匹=3%になったとしてダニ1世代(20日とした)あたりの増加係数は(240/30)^ 1/4.5=1.59 となりました。これは「ミツバチのダニ防除」に書いてある1.45という数値に近いけど、それよりもちょっと多く、この増加係数を見る限り「自然巣ならダニは増えにくい」っていうのはめっちゃ嘘ですね。むしろちょっと増える(笑)
ハッチ@宮崎さん
ですよねえ・・・
海外のブログや文献等を調べても、ダニはそんなに甘くはないというのが実情な気がします。
でも私、自分でやってみないと気が済まなくてw
前職というか、実はまだ退職してないんですけど、私の職業が自然派系種苗会社の従業員でありまして、この業界にいると、自然派業界、農薬業界双方が経済的な意味で陰謀をたくらんでいて、双方とも都合の悪いことは全然言わないのがめっちゃ身に染みてますw なのでもしかすると、金太郎氏が我田引水のために都合のいいことを言っている可能性もあるし、逆に例えば「アピ○○に暴露すると世代を重ねるうちにダニ耐性遺伝子活性が低下する」とかの悪影響があったとしてもその情報はなかなか出てこないと思うんですね。曇りなき眼で見定めないといけませんね(笑)
半年間モニタリングを続けてきたうちの例だと、A1群に関しては500~1000匹くらいのオスを羽化させたにもかかわらず、ダニ寄生率がいまだに1%以下に抑えられていて可能性を感じないことはないです。A2も行けそうかなという感じ。群れ同士の盗蜂がない前提ですが。
K1K2に関しては、たぶん何もしないと越冬時の寄生率は5~12%くらいになりそうで、越冬にかなりの不安が残ります。
B1、B2に関しては、8月の変性王台更新時の無蜂児期間の終盤のダニトラップにより寄生率が1%以下にまで減ったため、ここからの蜂の増え方次第では越冬できそうに感じていますが、こちらはまず3枚群で分けだしたものがちゃんと5枚群にまで増えるかというそもそもの問題がありますw自然巣を盛らせつつ群生を拡大させるのにはかなり膨大なエネルギーが要りますから。
今日はこれから、A1の低寄生率の要因を調べるべく、各群の巣房径を測りに行ってきます!
9/27 08:47
もりゆこさん
コメントありがとうございます。
東さんの本、いろいろな方策が紹介されてて知的好奇心くすぐりますよね!私も何回も見返してます。
私の中で寄生率と防除のタイミングと季節変動を明確に数値化できればいいなと思っていて、寄生率モニタリングを続けてます。
もりゆこさんの対策は主にオス蜂児トラップですか?それともほかの方法(温熱法など)の組み合わせですか?私の蜂友たちの話ではトラップだけだとだめだったなんて話を聞いたりもしてて、3年間ダニが増えないのはすごいなと思います。
もう一点、アルコール法、シュガーロール、腹側撮影などのモニタリングはしてますか?3年間ダニが増えないっていうのが、数値的にどのレベルなのか知れたらとても参考になります。
私は、フルバリネートやアミトラズの影響が同じ節足動物の蜂に対して全くないわけないだろうと思っていて、完全に化学薬品を取り除いて数世代飼育すれば、なにかしらの総合的なダニ耐性のようなものがついたりしないかなと予想を立てています。その意味で、セイヨウミツバチを3年間無農薬でやっているもりゆこさんのコメントは励みになりました。
9/30 18:08
巴里沙農園金稜辺部さん
ダニ対策はオス蜂用巣卑を入れています。蓋がけがされるたびにガリガリやって戻すだけです。たまにガリガリした後で地面に打ち付けてダニを観察しています。温熱法も併用?しています。?をつけたのは、単純に日向に置いているだけだからです。
オス蜂用巣卑だけで行けそうだと思った矢先、4群のうち1群にかなりのダニ増殖がみられ困惑しましたが、そのまま夏が近かったので温熱状態にできそうなので放置したところ、ダニは居なくなりました。 いまのところ、オス蜂トラップだけでは不十分だと思っています。
観察は極めて適当で、地面に打ち付けて出た蛹を上からざっと見るだけです(写真添付します)

このやり方の欠点は幼虫まで飛び出してしまうので、ダニの寄生場所が減ることでしょうか?
バロア感受性の遺伝子などの個人的感想などは日誌に書いているので参照してみてください。
9/30 20:20
もりゆこさん
お返事ありがとうございます。
日誌、ザっとすべて読みました。VSHの話や乳酸レシピ参考にさせてもらいます。
私はほんとはセイヨウミツバチに浮気してる場合じゃなくて、二ホンミツバチに力を入れるべき立場の人なんですけど、巣枠で構いすぎた結果、いま全部逃げちゃってて(苦笑)
浮気とはいえ、セイヨウの奥深さ(二ホンミツバチのようにミステリアスでスピリチュアルなのではなく、どこかに必ず答えがある感じ)に完全にとらわれてしまいました。それと私もはちみつはセイヨウの二段目の白い巣脾から採ったもの方が好きです。二ホンミツバチの、ほんのり幼虫の香り?おばあちゃんちの香り?がするやつは若干苦手でありますw
温熱療法も併用されていたのですね。太陽に当てておくだけでも効果があるとは!巣内温度も東さんの本の例に近く、しかも手軽に試せそうですね! 私のセイヨウ第二蜂場が日の当たる所なんですが、確かに言われてみると、7月末からそこに置いたB3の群れはダニの増え方が遅かったような・・・
私がもう一つ期待している方法は、8月に無王化もしくは女王隔離により人工的に無蜂児期間を作って、そこにほかの群の蜂児枠を借りてきて突っ込むというものです。蜂児がなくなりダニが極限にムラムラしてるタイミングを狙えば、かなり効果があると思います。この日誌のB1B2は最初からこれを狙って無王化したというより、変性王台で増やそうと思って結果的にそうなっただけなんですけど、とても強力なダニ防除効果を感じました。
このためには少なくとも1群は貸出元となる健全群が必要で、VSH系統のようなダニに強い群れが必要になるんですけどね(笑)
明らかにダニ耐性がありそうな群れがいたらまた日誌で教えてください!読みます!
9/30 22:44
巴里沙農園金稜辺部
埼玉県
金稜辺生産販売農家として新規就農予定。2026年より「東洋ランの大石」さんの金稜辺部門を引き継ぎます!!元野口種苗研究所店員、34歳。 キンリョウヘンにとって最...
ハッチ@宮崎
宮崎県
昭和59年10月4日、人家の壁内に営巣していた日本みつばち群をラングストロス(巣枠入り)巣箱に収容して以来、飼育を継続しています。翌昭和60年の春からは生態比較...
巴里沙農園金稜辺部
埼玉県
金稜辺生産販売農家として新規就農予定。2026年より「東洋ランの大石」さんの金稜辺部門を引き継ぎます!!元野口種苗研究所店員、34歳。 キンリョウヘンにとって最...
もりゆこ
広島県
西洋蜜蜂を庭園養蜂しています。現在4群。フローハイブも。
巴里沙農園金稜辺部
埼玉県
金稜辺生産販売農家として新規就農予定。2026年より「東洋ランの大石」さんの金稜辺部門を引き継ぎます!!元野口種苗研究所店員、34歳。 キンリョウヘンにとって最...
もりゆこ
広島県
西洋蜜蜂を庭園養蜂しています。現在4群。フローハイブも。
巴里沙農園金稜辺部
埼玉県
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