投稿日:9/25 12:06
キンリョウヘンを最高の状態で育てるにはどうしたらいいかを突き詰めると、やはり野生状態を再現するのが一番いいのでは?と思い、栽培用土の素材や粒形、通気性を様々なパターンで試し、最終的な配合が決まりました。
その用土で1年間育てたキンリョウヘンの根を切り取って顕微鏡で観察してみると、ラン型菌根共生の存在が確認されました。

黄色っぽい粒が菌糸コイルと呼ばれるもので、ラン型菌根共生では、ランは細胞内に木材腐朽菌の菌糸を誘導し、しばらく飼養したのち、なんとこれを消化して食べています!一般的な草木がしているようなアーバスキュラー菌根共生などより、植物側にやや片利した共生体系です。(詳しくは「菌根の世界」斎藤雅典)
これまでの東洋ラン業界では、無機質培土を使い殺菌剤を高頻度で散布し、すっぽ抜けなどの病害を防いできましたが、それはある意味諸刃の剣、菌根菌まで殺してしまう悪手だったのです。
先述のように、ランが菌根共生を結ぶ菌は、木材腐朽菌、すなわちキノコなのです。キノコという生き物は、ほかの植物を分解して暮らしていますので、生きている植物にとっては毒となる酵素をたくさん出しています。そんなある意味危険なキノコを根の中に呼び込んで飼っているのなら、キンリョウヘンにはそれを可能にするメカニズムがあるはず。そしてそのメカニズムは他の病原菌に対する耐病性にも通じているのではと推察されます。
実際、当園の実験圃場のすっぽ抜けの発症率は春から秋の合計で5パーセント、17/350株に散発的にみられるほどで、特に広がりを見せる様子はありませんでした。
現在、佐賀大学農学部と協力して、この共生菌の種類は何なのか、DNA検査を予定しています。(現在単離した菌を純粋培養中)
さるかに農園さん
今のところ、という前置き付きですが、広葉樹の樹皮チップと炭をメインで使いつつ、杉皮を少しブレンドしたものが最もいい成績を出しているように見えます。杉皮はpH調整的な意味合いがあるのかなと思っています。キンリョウヘンだけでなく、ランは細根のない太い根ですよね?それなのに木の上みたいな圧倒的不利な環境に着生して問題なく生きています。私は、細根の役割を菌根菌ネットワークが代替することでそれが可能になっているのではとほぼ確信しています。今年の暮れか来年の春ごろから佐賀大学辻田ラボの院生さんがキンリョウヘンと菌根菌をテーマに研究を開始するそうですから、野生株についての知見もどんどん出てくるはずです!乞うご期待!
9/25 20:50
さるかに農園さん
まさに私も同じように思って、この栽培法にたどり着きました。どちらかというと無農薬とかの思想系から入ったのに、顕微鏡を覗いたら正しい答えがそこにあった感じです!
樹皮フェノールについてご存じなのですね!樹皮を使う理由はまさにその分解のしにくさにあります。キンリョウヘンは商業栽培するとなると最低2年は同じ鉢の中で過ごしてもらわないとなりません。そこで、あまりにも分解の早い物質だと困るのです(物理的な意味と窒素飢餓の意味で)。コナラ等のコルク質が厚い樹皮がいいなと思って集めてるんですが、量を集めるためにケヤキとかも混ぜています。杉皮ブレンドの成績が良かったのは朗報でした。西川材のお膝元である当地では杉皮はいくらでも手に入りますからね。
もちろん木部を使った試験もしています(笑) こちらは、なめこを栽培しようとして失敗し、カワラダケが占有してしまったイヌシデの榾木をチップ状にして、鹿沼とブレンド&単体で試験しているのですが、どちらも意外に生育良好で経過が楽しみな鉢となっています。このイヌシデは伐採から1年しかたっていない新鮮なものでしたから、椎茸の廃榾(4年とか?)だとどうなんでしょう?栄養が吸われつくしているような気もしなくもないです。ドリルクズは径が小さすぎるのが目詰まりの面でちょっと心配ですが、使えないことはないと思います。
いまうちのお遊び実験鉢で一押しの生育を見せているのは、3~6㎝の超大径コナラ樹皮チップを使い素焼きの浅鉢に植えたものです。キンリョウヘンはかなり大径のチップでもよく育ちますよ!
9/25 22:35
さるかに農園
東京都
2021年に1群を迎え、採蜜、越冬、スムシ退治、分蜂強制捕獲、翌日逃去などひと通りの経験しかない素人。2022年9月に新たな入居確認。やっと2群になった。と思っ...
巴里沙農園金稜辺部
埼玉県
金稜辺生産販売農家として新規就農予定。2026年より「東洋ランの大石」さんの金稜辺部門を引き継ぎます!!元野口種苗研究所店員、34歳。 キンリョウヘンにとって最...
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