2019/8/30付けの日誌(→https://38qa.net/blog/72618) で、「月刊ミツバチ」(S37/2号)に紹介されていた理学・農学博士田中義麿先生の「ヘチマ棚によるスズメバチ対策」を実際に試していることを書いた。以下はその結果報告である。
実施した内容は、田中博士が紹介した「ニホンミツバチの巣箱の周囲にヘチマを植えてヘチマ棚を巡らすことでススメバチ被害が防げた」の検証である。観察が容易な、自宅近くで環境が似た営巣中の巣箱10箱を選び、「ヘチマ棚あり」の5箱(ABCDE)と、比較対象とする「ヘチマ棚なし」の5箱(FGHIJ)で経過観察した。
11月下旬になり茨城北部では霜が降りる日が増えた。ススメバチの飛翔する姿もほとんど目にしなくなったため、ここで今年の本検証の結果を報告することにしたい。
結論から言うと、ヘチマ棚ありのABCDEについてはABCの3箱は無傷で存続。ヘチマ棚なしのFGHIJにいてもFGHの3箱が無傷で存続、という結果になっている。この同数の数字をどう判断するかだ。全体的な印象として、今年の当地はススメバチの飛来が少なかったように思われることを断っておく。いなくなった(消滅または逃去)巣箱の状況は次の通り。
ヘチマを巡らしてもいなくなった巣箱Dは特殊なケースで、イノシシと思われる動物に巣箱底部の土を掘られ巣箱ごとひっくり返されたことによる逃去である。Eは巣箱の底部・巣門反対側の小さな隙間穴をスズメバチにより削られ広げられて侵入を許してしまったことで逃去。ヘチマは巣箱横から伸びて巣箱上部に棚を作らせ葉を広げさせていたが、底部後ろ付近は茎も葉も何もない空白ゾーンであった。死角と言えば死角の場所に隙間があったのが敗因。
ヘチマを巡らせない巣箱でいなくなった巣箱Iは、唯一の巣枠式巣箱。巣門をススメバチに塞がれている状況を何度も目撃していたので、間違いなくススメバチによる逃去である。J箱はもともと弱小群であったこともあり、いなくなった原因がススメバチかどうか判断できない。
では存続している巣箱についてはどういう経過を辿っただろうか。
各巣箱の経過観察はほぼ均等に行ったので、スズメバチがヘチマ棚ありの巣箱を襲っている状況とヘチマ棚なしの巣箱を襲っている状況の違いは感覚的であるが確認できている。あくまで両ケースの相対比較で、個人的印象でしかないが、ススメバチ(特にオオスズメバチ)の飛来が少ないのはヘチマ棚ありの方である。キイロススメバチは巣門付近まで近寄る姿をなんども目撃しているもののオオスズメバチは目撃していないし粘着シートにもくっ付いていない。ヘチマ棚なしの方にはオオスズメは一定数くっ付いているという結果である。
このことから、もしかしたらだがオオスズメバチが忌避する何かしらの成分が発散されているのかもしれない。それは葉からの蒸散成分か、花から放たれる成分かも知れぬ。あるいはヘチマ水にはかかるスズメバチ忌避の薬効もあるのかも知れない。(現在ヘチマ水を集めている。溜まったら冷凍保存し、来年にこの点の再検証に使う予定にしている)
以上の結果だけで直ちに効果ありとするにはデータが不十分である。アプローチ手法も稚拙すぎる。したがって説得力はないのは承知している。込み入った手間もかからず金もかからないこの対策であるので、来年もまたこの検証の続きを実施していくつもりだ。
(大型のヘチマの実がなり葉も茂った品種である。種がたくさん取れたので、来年試してみたいという方にはぜひお分けしたい。)
ヘチマ棚にこんもり茂ったヘチマの葉は、夏場の巣箱の日よけにも大いに役立った。ススメバチを近づけない効果という当初の実験目的はともあれ、ミツバチたちにとっては涼しく快適な巣箱環境の一助となったのではないかと思う。
今年は例年になくスズメバチ被害が少なくて12月を迎えられそうだ。アカリンダ二の兆候もまったくない。このまま現在飼育中の15群がめでたく年越しすれば今までにない好成績である。