昭和23年から昭和45年にかけて発行されていた古い雑誌で「月刊ミツバチ」(養蜂技術協会)という養蜂家向けの月刊誌があります。そのなかの昭和37年2月号に面白い記事・コラムを見つけました。「スズメバチ対策とヘチマ棚」という題で、筆者は理学及び農学博士で、国立遺伝学研究所の要職も務めた田中義麿という先生。田中先生は「近代遺伝学の基礎を築き上げたほか、世界初の試みである半野生動物の品種改良など動物育種学の先駆者となった」(wikipedia)という、この方面のオーソリティでとてもエライ方です。田中先生も趣味で養蜂をされていて、コラムには「スズメバチにはさんざん悩まされた」とあり、やはりたいへん苦い思いをされていたようです。どうやらそこで研究者魂に火がつき、スズメバチ対策・研究に取り組んだのかもしれません。
コラム内容を簡単に記すと、巣箱の上にヘチマ棚を掛けたところスズメバチ被害から解放されたというもの。「最近5年間というものは全くスズメバチ被害から解放された」といい、この自らの体験の結果には大変に満足しておられます。それがどういった科学的な理由によるものなのかまでは言及されていないのでわかりませんが、理学・農学者の田中先生としては、おそらくヘチマの葉や茎・あるいは実などにスズメバチの嫌がる何かしらの物質の存在可能性を見出し、確信していたのではないかと思えます。そしてコラム最後には「筆者の喜びを分かち合いたい一心からこの文をものにした次第である」と結んでいます。
このコラムを読んで「これはやってみる価値あり」と思い、今年はヘチマを5カ所の巣箱横に植えて棚を作っています(比較のためにヘチマ棚無しの巣箱も近くに用意してあります)。どの棚もいまは葉が茂り花が咲き、小さいながらもヘチマの実が付きだしているところです。まだスズメバチの飛来が本格化していないので効果のほどは分かりませんが、結果が楽しみです。ぜひとも田中先生のような満足を得たいものです。
スズメバチの捕獲装置や防御の金網、スズメバチトラップなどと違い、巣箱からスズメバチに距離を置かせてそもそも「寄せ付けない」という斬新な視点がとても面白く興味を引きます。しかもヘチマという栽培も容易な植物を利用することで、廉価で誰でも容易に試せる方法です。もし効果が十分確認できたら最強・最適な対策になるでしょうね。