近年有名になっている福岡県のキンリョウヘンの自生地、太宰府天満宮に行ってきました。ここのキンリョウヘンの事はかなり前から知って見ていましたが、当時はニホンミツバチに関係していなかったので、あるなーという位で見る程度でしたが、今回は開花時期をねらって行きました(5/3)。自生のキンリョウヘンは、他にも同じ九州南部と四国で見ていますが、他はいずれも人里離れた人跡未踏な感じの深山の渓谷でした。しかしここと同じ点もあり、それは同様に巨大なクスノキに着生している点です。よく公園のクスノキにノキシノブが着生していますが、それと同様にキンリョウヘンもクスノキに着生しているのです。キンリョウヘンの栽培が難しいとか、なかなか開花しない、という方がいらっしゃるようですので、それらの参考になればと書きます。植物は、その野生状態がわかれば、基本的にはそれに合わせてやれば、最も喜びよく生育しよく開花します。野生の状態というのは、その植物がその環境を「選んで」生えているからです。
自生しているキンリョウヘン クスノキの巨木の幹に着生している。これは大きな株で、葉の端から端まで80cmほどある。非常によく開花している。
1. キンリョウヘンは樹木に着生しているランで、地面に生えるランではありません
キンリョウヘンはシンビジウムでシュンラン属ですが、シュンラン属の中では異端児で、地面に生えているのではありません。ここが基本誤解されている部分のように思います。キンリョウヘンは、分類上はシンビジウムの仲間なのですが、その生態はオンシジウムと同じで樹木に着生して生息します。他の多くの植物でもそうですが、人間の栽培の都合で、扱いやすいように栽培されている場合があります。着生植物もそうで、本当は根はほとんど深く埋まっていないほうが好きなのですが、人間の扱いやすいように鉢植えされているため、根が鉢に深く埋まっています。そのため鉢では、深部の根が枯れたり腐ったりする場合があるのです。
2. キンリョウヘンには着生ランのオンシジウムの育て方がよい
シンビジウムの仲間なのですが、生態はオンシジウムで樹木に着生するキンリョウヘンは、そのため本来は地面や土との親和性はよくありません。そのため軽石は本来はあまり好きではないのです。人間が植えるため、仕方なくそこに生育しているだけで、本来の生息状況とは大きく異なります。鉢の中はできるだけバークにして、バークだけでもいいと思います。私はバークだけで育てています。バークもいろいろありますが、具体的にはネオソフロンaが、最も生育が良いように思います。鉢も、本来は浅くてもいいのですが、扱いやすいので、私は基本5号のロングのスリット鉢を使用しています。スリット鉢のほうが水の排出も早く鉢底の通気がよく鉢の内部が乾燥しがちなので、樹木に着生した状況に近いからです。バークのみでスリット鉢で育てることで、根腐れはありません。スリット鉢に浅めに植えるのでいいと思います。
3. 自生の状況では、ぼぼ日当たりがよい
公園の大きなクスノキを見ていただければわかると思いますが、それほど葉が密ではありませんし、葉の色も濃くありません。そのため、その枝上などは、よく日が当たっています。画像を見ていただければわかりますが、クスノキの枝上に生えているキンリョウヘンの中には、ほぼ1日中日光が当たっている株もあります。それで非常によく開花しています。私は、キンリョウヘンにはまったく遮光をしておらず、日当たりがいい場所で育てていますが、よく開花します。私は、葉の観賞をすることが目的でなく開花が目的であれば、キンリョウヘンに遮光はまったく必要ではないと考えています。葉の色が黄色っぽくなりますが、何ら問題はなくよく開花します。自生地の株の葉の色も、黄色っぽいです。
キンリョウヘンが多く着生しているクスノキ 枝が横になった部分によく着生している。日当たりはかなり良い。非常によく開花している。
肉眼で見た葉の色は、これに近いです。黄色みが強い。こぼれんばかりに開花しています。
↑上の画像のアップです。今回初めてニホンミツバチの訪花も確認しました。この木に付いた株は開花が早かったようで、花はほぼすべて受粉した後のように見えました。ニホンミツバチが受粉させた可能性があると思います。これを見て、時には分蜂群が集まっている可能性があると思いましたが、キンリョウヘンがあるのは低くても地上3m以上で大半は10m以上なので、ほとんどの人は気付かないだろうと思います。
樹木に着生しているのですから、水は雨水のみで、肥料分もごく少ないはずです。しかしやはり水分が多いほうが良いのか、四国でも川の近くにあり尾根にはありませんでしたし、ここでも池の周辺にしかないようでした。
以上、ごく簡単にまとめますと、キンリョウヘンの用土にはバークのみを用いて(ネオソフロンaをオススメします)、鉢はスリット鉢を使用し、浅めに植えます。観葉目的でなければ、真夏でも遮光は一切必要ありません。これらで、自生の状態にかなり近くなると思います。葉の色は黄色みが強くなってもかまいません。とにかく日光に当ててください。そのほうが、株に開花に向かうパワーが貯まります。
それに、ほんの少しだけ肥料を与え(置き肥ではなく、コントロールが容易なため、うすい液肥を週に1回だけ)、肥料を与える時期は、開花後の4月から8月頃までとして、それ以降は、一切肥料を与えてはいけません。 ← これは重要です。
水は、夏期は毎日与えてください。それ以外の時期は適宜。
自生しているぐらいですから、日本海側を除く西日本でしたら、基本、冬季も屋外で越冬で大丈夫です。マイナス3度くらいまででしたら、一瞬でしたら耐えられます。私は広島市内で冬もそのままですが、まったく問題ありません。数日間積雪の下になる時もありますが、これまで影響があった事はありません。むしろ、花芽が付き、育つためには、冬の寒さが必要です。
これで、年明け2月頃から屋内に入れ、少しずつ家の中の暖かい場所に移動させ、開花調整しています。