投稿日:2021/5/13 01:57, 閲覧 4961
近年有名になっている福岡県のキンリョウヘンの自生地、太宰府天満宮に行ってきました。ここのキンリョウヘンの事はかなり前から知って見ていましたが、当時はニホンミツバチに関係していなかったので、あるなーという位で見る程度でしたが、今回は開花時期をねらって行きました(5/3)。自生のキンリョウヘンは、他にも同じ九州南部と四国で見ていますが、他はいずれも人里離れた人跡未踏な感じの深山の渓谷でした。しかしここと同じ点もあり、それは同様に巨大なクスノキに着生している点です。よく公園のクスノキにノキシノブが着生していますが、それと同様にキンリョウヘンもクスノキに着生しているのです。キンリョウヘンの栽培が難しいとか、なかなか開花しない、という方がいらっしゃるようですので、それらの参考になればと書きます。植物は、その野生状態がわかれば、基本的にはそれに合わせてやれば、最も喜びよく生育しよく開花します。野生の状態というのは、その植物がその環境を「選んで」生えているからです。
自生しているキンリョウヘン クスノキの巨木の幹に着生している。これは大きな株で、葉の端から端まで80cmほどある。非常によく開花している。
1. キンリョウヘンは樹木に着生しているランで、地面に生えるランではありません
キンリョウヘンはシンビジウムでシュンラン属ですが、シュンラン属の中では異端児で、地面に生えているのではありません。ここが基本誤解されている部分のように思います。キンリョウヘンは、分類上はシンビジウムの仲間なのですが、その生態はオンシジウムと同じで樹木に着生して生息します。他の多くの植物でもそうですが、人間の栽培の都合で、扱いやすいように栽培されている場合があります。着生植物もそうで、本当は根はほとんど深く埋まっていないほうが好きなのですが、人間の扱いやすいように鉢植えされているため、根が鉢に深く埋まっています。そのため鉢では、深部の根が枯れたり腐ったりする場合があるのです。
2. キンリョウヘンには着生ランのオンシジウムの育て方がよい
シンビジウムの仲間なのですが、生態はオンシジウムで樹木に着生するキンリョウヘンは、そのため本来は地面や土との親和性はよくありません。そのため軽石は本来はあまり好きではないのです。人間が植えるため、仕方なくそこに生育しているだけで、本来の生息状況とは大きく異なります。鉢の中はできるだけバークにして、バークだけでもいいと思います。私はバークだけで育てています。バークもいろいろありますが、具体的にはネオソフロンaが、最も生育が良いように思います。鉢も、本来は浅くてもいいのですが、扱いやすいので、私は基本5号のロングのスリット鉢を使用しています。スリット鉢のほうが水の排出も早く鉢底の通気がよく鉢の内部が乾燥しがちなので、樹木に着生した状況に近いからです。バークのみでスリット鉢で育てることで、根腐れはありません。スリット鉢に浅めに植えるのでいいと思います。
3. 自生の状況では、ぼぼ日当たりがよい
公園の大きなクスノキを見ていただければわかると思いますが、それほど葉が密ではありませんし、葉の色も濃くありません。そのため、その枝上などは、よく日が当たっています。画像を見ていただければわかりますが、クスノキの枝上に生えているキンリョウヘンの中には、ほぼ1日中日光が当たっている株もあります。それで非常によく開花しています。私は、キンリョウヘンにはまったく遮光をしておらず、日当たりがいい場所で育てていますが、よく開花します。私は、葉の観賞をすることが目的でなく開花が目的であれば、キンリョウヘンに遮光はまったく必要ではないと考えています。葉の色が黄色っぽくなりますが、何ら問題はなくよく開花します。自生地の株の葉の色も、黄色っぽいです。
キンリョウヘンが多く着生しているクスノキ 枝が横になった部分によく着生している。日当たりはかなり良い。非常によく開花している。
肉眼で見た葉の色は、これに近いです。黄色みが強い。こぼれんばかりに開花しています。
↑上の画像のアップです。今回初めてニホンミツバチの訪花も確認しました。この木に付いた株は開花が早かったようで、花はほぼすべて受粉した後のように見えました。ニホンミツバチが受粉させた可能性があると思います。これを見て、時には分蜂群が集まっている可能性があると思いましたが、キンリョウヘンがあるのは低くても地上3m以上で大半は10m以上なので、ほとんどの人は気付かないだろうと思います。
樹木に着生しているのですから、水は雨水のみで、肥料分もごく少ないはずです。しかしやはり水分が多いほうが良いのか、四国でも川の近くにあり尾根にはありませんでしたし、ここでも池の周辺にしかないようでした。
以上、ごく簡単にまとめますと、キンリョウヘンの用土にはバークのみを用いて(ネオソフロンaをオススメします)、鉢はスリット鉢を使用し、浅めに植えます。観葉目的でなければ、真夏でも遮光は一切必要ありません。これらで、自生の状態にかなり近くなると思います。葉の色は黄色みが強くなってもかまいません。とにかく日光に当ててください。そのほうが、株に開花に向かうパワーが貯まります。
それに、ほんの少しだけ肥料を与え(置き肥ではなく、コントロールが容易なため、うすい液肥を週に1回だけ)、肥料を与える時期は、開花後の4月から8月頃までとして、それ以降は、一切肥料を与えてはいけません。 ← これは重要です。
水は、夏期は毎日与えてください。それ以外の時期は適宜。
自生しているぐらいですから、日本海側を除く西日本でしたら、基本、冬季も屋外で越冬で大丈夫です。マイナス3度くらいまででしたら、一瞬でしたら耐えられます。私は広島市内で冬もそのままですが、まったく問題ありません。数日間積雪の下になる時もありますが、これまで影響があった事はありません。むしろ、花芽が付き、育つためには、冬の寒さが必要です。
これで、年明け2月頃から屋内に入れ、少しずつ家の中の暖かい場所に移動させ、開花調整しています。
Birdman
広島県
2020年にたまたま分蜂群を捕獲し、それは友人に譲ったのですが、その感触から急にまた飼いたくなり、2021年からまた本格的に飼育を始めました。
ハッチ@宮崎
宮崎県
昭和59年10月4日、人家の壁内に営巣していた日本みつばち群をラングストロス(巣枠入り)巣箱に収容して以来、飼育を継続しています。翌昭和60年の春からは生態比較...
おはようございます、Birdmanさん!
とても参考になる現地レポートどうもありがとうございます(*^-^*)
私、栽培下手で着床栽培を考えていたので、その目指すべき自生の様子がよくわかりBirdmanさんの栽培法が理にかなっているのだと確信が持てました(^^)
ついに開花しなくなってしまった我が家の1鉢、枯らしてしまう前に本来の生息環境に戻してあげようと思います(^_^;)
2021/5/13 05:00
Birdman
広島県
2020年にたまたま分蜂群を捕獲し、それは友人に譲ったのですが、その感触から急にまた飼いたくなり、2021年からまた本格的に飼育を始めました。
ハッチ@宮崎さん ミツバチに関してはニホンさんでもセイヨウさんでもとても飼育がうまく、自由自在に操れるハッチ@宮崎さんが、キンリョウヘンがうまく栽培できないとはかなり腑に落ちないですが、そのような事もあるのですね。
自生の植物の状態や環境には、栽培の答えがあります。植物自体が答えを出してくれているので、その植物自体が自ら選んだ環境にいるので、その環境や条件にしてあげると、最も良いはずです。
多くのキンリョウヘンが、好きではない軽石や石に根が深く埋められ、深鉢で底の根は呼吸困難で多湿で、さらに、葉にあまり日光もあたらないという過酷な条件の中にいるので、弱っていてあまり開花しないのだろうと思っています。
2021/5/13 11:26
Birdman
広島県
2020年にたまたま分蜂群を捕獲し、それは友人に譲ったのですが、その感触から急にまた飼いたくなり、2021年からまた本格的に飼育を始めました。
J&Hさん 同様のお考えという事で、こちらも励みになります。
以下は、現在私が行っている方法というだけで、今後もっと良い方法がわかり出てくる可能性がありますが、参考までに、僭越ながら画像もアップさせていただきます。みなさんで、今後、より良い方法が探られればと思っています。
バークの粒の大きさについては書き忘れておりました。ネオソフロンaでいいますと、基本M粒(6~15mm)を使用しています。今は、S粒(約6mm)でも様子を見ています。あまり差はないように思いますが、やはり多少保湿力が高いようですので、夏場を考えるといいのかもしれません。もしかしたら、両方のブレンドが最も良いのかもしれません。L粒(15~25mm)は、試した事がありません。
2021/5/13 11:48
Birdman
広島県
2020年にたまたま分蜂群を捕獲し、それは友人に譲ったのですが、その感触から急にまた飼いたくなり、2021年からまた本格的に飼育を始めました。
自生状態の画像等を追加します。
生えている場所は、多くはかなり日当たりがよい場所ですが、もちろん日当たりが少ない場所にもあります。日当たりがよい場所でも、もちろん1日のうちでは2時間程度ぐらいは陰になっているのかなという場所です。1日中日当たりがよい場所がいいと書きましたが、よほどの平野部で何もない場所でない限り、丸1日ずっと日が当たり続ける場所はないと思いますので、普通はずっと日が当たり続けると思われる場所でいいのではないでしょうか。
葉の色がわかりやすいように、画像を拡大しました。見た目の葉の色はこれに近いですが、撮影時間が午後遅めでしたので、多少その影響はあるかもしれません。
もちろん、時間によってはあまり日当たりがない場所にも生えています。着生ランのイメージに近いですね。
横枝上の株のアップです。この場所は、ほぼ1日中日当たりがよいと思われる場所です(おそらく、ごく短時間しか日陰にならないと思われます)。このように、真夏も西日がガンガン当たるような場所ですが、非常によく開花しています。
2021/5/13 12:21
Birdman
広島県
2020年にたまたま分蜂群を捕獲し、それは友人に譲ったのですが、その感触から急にまた飼いたくなり、2021年からまた本格的に飼育を始めました。
あと、できるだけ株が樹上にあるような状態にしてあげるのがいいと思います。やはり地面近くは好きではないようで、よく、雨の跳ね返りで泥が当たるような場所のキンリョウヘンは、花が咲かなくなると聞きますが、それはやはり株が地面近くにあるのが好きではないからだろうと思います。棚の上などに置き、できるだけ地面から離して、風通しもよく、まるで大きな木の横枝の上にいるような環境にしてあげるといいと思います。
2021/5/13 12:32
Birdman
広島県
2020年にたまたま分蜂群を捕獲し、それは友人に譲ったのですが、その感触から急にまた飼いたくなり、2021年からまた本格的に飼育を始めました。
nakayan@静岡さん ご意見ありがとうございます。いろいろあっていいのではないでしょうか。できるだけ野生本来の姿に近づける方法、それに少し人間の扱いやすさを加えた方法、試行錯誤してみましょう。手間まで考えると、育てる鉢の数も影響するかもしれませんね。同じ場所で、いろいろ変えて、株の増え方や開花数などを比較できたら面白そうですね。
2021/5/15 00:51
こんばんは(^^)
とても素晴らしい御投稿ありがとうございます^^
天然のキンリョウヘンは木に生えているのですね!
知りませんでした。まるで風蘭見たいですね!
成る程 だから水をやり過ぎると枯れるのですね~物凄く納得できました!
いつもお勉強になる御投稿感謝致します(*^^*)
2021/5/14 22:10
Birdmanさん、こんにちは。
自生するキンリョウヘンというものを始めて見ました。シンビジューム類と同じ仲間だと思っていたので、まさか木に着生して生えているとは知りませんでした。
昨年師匠から巣箱を譲り受けたときに、一鉢の素焼鉢に植わったキンリョウヘンも譲り受けたのですが、現在は木の根本に置いていて、ひょろっとして元気も無いように見受けられます。
蘭そのものも、販売していたことはありますが、自分で育てた事がありません。が、Birdmanさんの日誌を参考に、自然に近い状態で栽培してみようかと思います。大変参考になりました!
2021/5/13 13:24
Birdmanさん
こんにちは!素晴らしい写真、詳しい説明、有難う御座います!日本に、自生しているのですね!勉強になりました。
2021/5/13 17:40
J&H
和歌山県
Birdmanさん、貴重な観察日誌、参考になりました。こちらも時々キンリョウヘン栽培についての回答をさせて頂きますが、良く日に当てる、用土はバークを使用する、には同感で今までもそのようにお答えさせて頂きました。・・・が、疑問を解消するためにも次の2点を付け加えて頂けると皆さん方の参考になるかと思われます。
①バークの粒の大きさにも数種類ありますので、どの大きさが最適か?。また、バークを仕入れて、わざわざ細かく砕いて間違った使用する方もおられますのでその辺の注意なども必要と考えます。
②現地観察は1日中でしょうか?、時間帯によっては日当たり具合が変化します。また、葉っぱの良く茂った真夏の日当たり具合も、ぜひ知りたいです。
2021/5/13 08:06
nakayan@静岡
静岡県
本格的に始めたのは2015年からですが、13年の9月に柿の木の蜂球を見つけて角洞に飼い始めましたが年を越せずに消滅しました。14年に金稜辺を二鉢購入し翌年から本...
Birdmanさん、金稜辺はそもそもが着生植物ですから木に生えているのは本来の姿ですが、栽培上はそれが最善の姿とは言えないと思います。むしろ栽培する上に置いては、理想的な環境を作り出して上げる事が最も良い結果を生む道であり、私は今現在行われている栽培法の方が、樹上で着生しているよりは、はるかに理想的な形になっている、と考えます。
私も過去の栽培において、バークはよく使用しますし、とてもよいコンポストだとは思いますが、これの欠点は、意外に早く組織が崩壊し、崩れてしまう事にあります。その為数年するとボロボロになったバークをキレイに落としてから植え替えする事が根腐れを防ぐ為に必要になり、そうしたことをある程度防止する為にも、軽石を混ぜた方が良いと私は考えます。
過去に金稜辺とミスマを幼苗から育てた事がありますが、幼苗の場合は特にバークの発育成績はよく、幼苗は私もバークのみで植えますが、その他のものは軽石とバークを混合して植え、それが鉢で作るのには最善ではないかと考えています。
2021/5/15 00:23
nakayan@静岡
静岡県
本格的に始めたのは2015年からですが、13年の9月に柿の木の蜂球を見つけて角洞に飼い始めましたが年を越せずに消滅しました。14年に金稜辺を二鉢購入し翌年から本...
Birdmanさん、
>いろいろあっていいのではないでしょうか。
おっしゃる通りですね。それはとても同感です。趣味の事ですから、それぞれの方が好きな方法で楽しむ事は私も大賛成です。 (^_^)v
>同じ場所で、いろいろ変えて、株の増え方や開花数などを比較できたら面白そうですね。
是非やってみて下さい。
2021/5/15 06:46
モリヒロクン
千葉県
79の遊び事好きジイです、年金生活者で 毎日が 日曜日です。メバル釣り 山菜採り 茸採りなどが 大好きです。犬も好きです。日本の山を 雑木林に変えたいなあ?
キンリヨウヘンは こんなにも 奥が深いとは ワタシの場合は ホームセンターで 買ったものを 単純に 管理しているだけで まるで 雲の上の お話でした 日誌を見ているとはたまに キンリヨウヘンを 結実させて その種子を 育てる様な 投稿を 見たこともありましたが!私如きが 手を出せる話では 有りません?その内にかが変わり 育ててみようなどと言う気には タブン ならないなあ? ハチ
2021/5/16 15:31
Birdmanさんさんキンリョウヘンの自生のレポートありがとうございます。初めて見ました。
姿に似合わず着生蘭ですね。数年前の株分け時に根が殆ど無かったのをミズゴケでくるみ素焼き鉢に入れていたら鉢から抜けない様になっていました。仕方なく鉢を割ってミズゴケを取り出してバークに植えました。
大株はともかく根が少なく植えてもグラグラするのはミズゴケ植えでも良いと思います。数年ほったらかしにするとコケを取り出すのに苦労しますが・・
暫くみつばちの顔を見なかったので作りをサボっていましたがミズゴケ植えもご参考になれば
今年のミカンの葉がふるう様な大寒波も外に出しっぱなしで大丈夫でした。これはバークで5号の駄温鉢に植えました。
2021/5/13 14:15
スタートは養蜂をしたくて始めた訳ではありません。 どちらかと言うと自宅へ毎年何回も分蜂して来るので仕方が無く養蜂を始めました。 敷地内古墳から自然巣からの分蜂入...
心春日和
鹿児島県
2児のパパです。2020年10月、知り合いの方から4箱のニホンミツバチの群を譲り受けて飼育を始めることになりました。 仕事と子育てしながら、なんとか飼育を続けて...
まーや
三重県
こんにちは!!毎年〜ほんの少しずつですが〜先輩方から、色々学びながら〜蜂生活を、楽しんで居ます♪ アドバイス頂いた方々など、勝手にフォローさせて頂く事が有ります...
こまめ
徳島県
ここ数年みつばちを見掛ける事が少なくなっていましたが3月末に1群、6月(多分)に1群と来てくれました。楽しい見回りが日課にみつばちから元気が貰えそうです。