おっとり
千葉県
ワバチが棲みたくなる洞をつくる。
投稿日:2023/10/25 06:03
これは2019年10月26日、私が養蜂を始めた頃の日誌、再放送ならぬ再UP!
もう一度、セイタカアワダチソウを考えてみる。
今日はセイタカアワダチソウの勉強をしました。ネットで検索したところ、武生高校の機関紙から引用です。
だから、どうだ?!ではなくて、現実はこうなのかと、、、
先日、ヤマハギの苗木を5本買いましたが、今度はミヤギノハギを追加で買いたい気持ちになりました。
http://www.ne.jp/asahi/tbando/risu/solidago.html
用語説明(私の解釈):ラメットとは同じクローンの地下茎
以下は論文を書かれた人が主人公です。
「花粉媒介者」
セイタカアワダチソウは昆虫が花粉を運ぶ「虫媒花」です。
咲き乱れるセイタカアワダチソウの中で秋のある数日,丸一日観察しました。
その結果22種の昆虫が確認されましたが,その中でもミツバチの数が圧倒的に多く,盛んに花序を訪れ,体に花粉をたくさんつけて動き回る様子がみられました。
このことから,セイタカアワダチソウの花粉を運ぶ昆虫のその主たるものがミツバチであるということがわかりました。
ちなみにミツバチのような昆虫をセイタカアワダチソウにとっての「花粉媒介者」とか「ポリネーター」といいます。
つぎに,天気のよい数日,のべ20時間くらい,今度はビデオカメラでセイタカアワダチソウの花序を撮影して,それをスロー再生しながら,
ミツバチの来た回数,花を訪れている時間,花序の上での行動を詳しく観察しました。
その結果,今度はミツバチの行動が,セイタカアワダチソウの自家受粉を防いでいるということがわかったのです。
普通ミツバチは花序に飛んでくると始めは下のほうの花を訪れ,徐々に歩いて上のほうに移りながら蜜を吸うのです。
ミツバチにとって飛んで上へ行くより,歩いて上へ移動するほうが消費するエネルギーが少なくてすみ,餌をとるコストを低く抑えているわけです。
ところがセイタカアワダチソウの花は上のほうから咲き下っていき,しかも雌花である舌状花が先に咲きます。
ですから,普通はだいたい下部の花序では雌花が咲き,上部の花序では雄花が咲いているという状態になるのです。
と言うことは,同じ花序を歩いているミツバチは他のラメットで体につけた花粉を下のほうで咲いている舌状花の雌しべの柱頭につけてから,
上部でその花序の花粉を体に付け直すことになるのです。
つまりセイタカアワダチソウは,主たるポリネーターであるミツバチの行動にあわせて花の咲く順序を決めているということなのです(図5)。
そのほか,ミツバチは一回花序を訪れるだけで,その時、開花しているほとんどの頭花を訪れることが分かりました。
筒状花の奥にある蜜腺にストローを伸ばして蜜を吸うと,ミツバチの胸や背中,足には確実に花粉がつき,
また,体についた花粉は花から飛び出ているめしべに触れてめしべにつきます。
したがって,一個の花が咲いている間に,たった一回ミツバチが訪れるだけで,ほぼ確実に受粉が成立することになります。
また,ミツバチの足についた花粉のかたまりや体についた花粉を顕微鏡で観察しても,セイタカアワダチソウ以外の花粉は見当たりませんでした。
ミツバチはセイタカアワダチソウにとって忠実で優秀な,願ってもないポリネーターなのです。
でも私はこの観察以来ひとつ気になることがあるのです。
セイタカアワダチソウが日本に入ってくる前にはセイタカアワダチソウのようにたくさんの蜜を安定的に生産する植物は日本の秋には見られませんでした。
それでも,いくらかの植物,例えば絶滅が危ぐされているオミナエシや,ハギなどがミツバチをポリネーターとして今でも生きています。
ところが,セイタカアワダチソウがミツバチを独り占めしてしまったら,一体だれがオミナエシやハギの花粉を運ぶのでしょうか。
「花が集まって咲く効果」
あるアメリカのある生態学者が「花が集まって咲くのは,より多くの昆虫を集める効果があるから」という仮説を提唱しました。
さっそく,セイタカアワダチソウでも同じ効果があるのか,検証のための実験をしてみました。
大きな群落の中で,離れた二個のラメットの花序に来る昆虫の数を一定時間数えました。
その後,一方のラメットの周りの花を刈り取ってしまい,一個の花序だけ孤立させ,さらに一定時間二個のラメットの花序に来る昆虫の数を数えました。
その結果,孤立させた花序に来る昆虫の数は,孤立させる前や,対照として孤立させないでおいた花序と比べても減少しました。
もちろん,「減少しました」と書けるのは統計的に有意の差があったということです(図6)。
したがって,セイタカアワダチソウにおいても集まって咲くことでより多くの昆虫を集める効果(誇示効果)があるということが明らかになり,
先の仮説は検証されたわけです。
「種子の稔実率」
花が咲き終わると小さい綿毛をつけた多数の種子が形成されます。種子の数を数えたら平均的な大きさの一個のラメットあたり4万5千個程度になりました。
これは,栄養繁殖を行わないで,種子でしか次の世代を残すことに投資しない種類の中でも特に多いといわれている,
アレチマツヨイグサやオナモミという植物の生産する種子数を越える数になります。
そして,生産された種子が実際に発芽する能力を持つかどうかを調べたところ,70~80%が発芽することが確かめられました。
かくしてセイタカアワダチソウの繁殖力はすごいということがわかった
(表題の答えとするには,まだまだ確かめなければならないことがたくさんある)
生物は繁殖のために大きく分けて二通りの戦略を持つといわれています。
一つは,すでに植物がたくさん生育しているような場所で見られる,他の種類との競争に打ち勝って多くの子どもを作る戦略です。
もう一方は,空き地などの不安定な環境の中で,できるだけ多くの子を作り,少しでも多く生き残ろうとする戦略です。
セイタカアワダチソウは地下茎による栄養繁殖では前者の戦略をとり,種子繁殖では後者の戦略をとっているということが浮かび上がってきました。
栄養をたくわえた長い地下茎の先にいち早く成長を開始する芽をつけ,他の種が成長するよりも早く背を伸ばしてその場所を立体的に占領してしまいます。
一方,長い期間よく目立ち,集まって咲くことでポリネーターを引き付ける結果,発芽能力を持った多くの種子を作ることが可能になりました。
これらの2つの戦略を同時にとることが,日本における急激な分布の拡大と各地での定着を可能にした一つの原因であるということがいえそうです。
また,異国から入ってきたセイタカアワダチソウの強力な競争相手になるような植物が,もともと日本にはなかったこともその原因の一つでしょう。
さらに,セイタカアワダチソウが生育できるような土地が日本のあちこちにあったことも忘れるわけにはいきません。
「まだだれも知らないことを知る楽しみ」
あとがきにかえて
「なぜセイタカアワダチソウのような雑草の研究をするのですか」とよく人に聞かれます。
それは,だれも知らないことを知ることが楽しいからです。
生物という科目はたかだか100年ほどの歴史しかない生物学を基礎としています。
中でも,分子生物学や生態学,進化生物学は今まさに発展期にある学問だと言えるでしょう。
そしてそれらの最新の研究成果は,現在の教科書に書いてあることを裏付ける重要な発見であったり,時には,教科書の内容を覆すような内容であったりします。
したがって私たちは常に情報を得て,知識を更新していかなければなりません。
そのような過程で得られた知識や方法論は,実際自分で確かめてみたくなります。
私にとってのセイタカアワダチソウは,まさに最新の情報を身近でためしてみるという,絶好の材料なのです。
そして,まだだれも調べていないことを調べ,それを知る歓びは何物にも代えがたいものがあります。
この文章は上越教育大学大学院学校教育研究科の修士論文「セイタカアワダチソウ(Solidago alltesima L.)の繁殖生態」(1997)の一部を書き換えたものです。
詳しい内容についてお知りになりたいかたには上記の論文を差し上げます。最後に,研究の機会を与えて下さった方々,研究に助言をいただいた皆様,研究を後押ししてくれた皆さん(私の家族も含め),そして,最後までこの文章を読んで下さったあなたに,この場を借りて感謝いたします。ありがとうございました。
この文章は武生高校の機関誌「武高評論」(2002年)に掲載されたものを転載しました。
おっとり
千葉県
ワバチが棲みたくなる洞をつくる。
セイタカアワダチソウは賢いな!
蜜蜂は雄花の花粉を体に付けて、他のセイタカアワダチソウに行って、下の方の雌蕊に先の雄花の花粉をくっ付けて、上へ登りその雄花の花粉を体にくっ付け、次のセイタカアワダチソウに訪花する。う~~( ^^) _U~~
2023/10/26 12:03