私の仕事場の休憩室の天井には女郎蜘蛛が巣を作っているのですが、餌となる蛾やカメムシ、ハエなども少なくなり、かかった獲物は確実に獲りたいと空腹をじっと堪えて待機していたのですが、この時期に同じように食べ物に困っている別の捕食者が部屋に入って来ました。部屋の明かりに集まる蛾を求めて来たらなんとなく部屋に入り込んでしまい、部屋の天井を歩いて来たと思われます。スズメバチに対抗できる(負けることが多いはずですが一度だけ勝って食べてるの目撃した)唯一と言っていい捕食者「カマキリ」です。
驚くべきはこのカマキリさん、蜘蛛の巣がどれほどヤバイか知っているかのような行動をしました。綱渡りをするのです。(私の認識が間違っているかもしれませんが)蜘蛛の巣って構造を成すために四方に最初に張る太い糸と、その中にグルグルと放射状に張っていくネットの糸に分けられると感じているのですが、この幹糸は強い代わりに粘着力が少ない。逆にネット状の糸は細くて壊れやすいけどちょっと触ったらベタベタ、そして女郎蜘蛛は鬼グモやコガネグモと違って放射ネット状の巣以外に、その付近の空間に粗く無作為な障害物的な糸を張り巡らします。飛んできた虫がこの障害糸に触れて嫌がり、脱出しようとして飛び出そうとすると放射ネット状の巣に絡まると言う仕掛けですが、カマキリはその構造糸と障害糸の上を綱渡りして来て、放射ネット状糸には絶対に触りません。もしも手にくっついてしまった時は唾液を出しながら丁寧に噛み切り、再び歩みを進めます。その振動がクモに伝わり、一瞬でカマキリに駆け寄ります。しかし相手が一筋縄ではいかない相手だと察し、すぐに巣の中心に戻って静止する。でもまた振動するから再び駆け寄って前足を大きく開いて闘おうとする。カマキリは上等だと言わんばかりに鎌を胸の前にしっかり折りたたんで臨戦態勢、それを何度も繰り返し、睨み合うことなんと6時間!女郎蜘蛛はカマキリが痺れを切らして放射ネットにかかるのを待っていましたが、カマキリは最後まで勝負には出ず、自ら落下しました。この攻防はまさに頭脳戦。ずっと張り付いて見ていた訳ではありませんでしたが、自分の不利になる闘いはしないと徹底したカマキリさんに敬服いたしました。捕まえて外の草にとまらせ、別の獲物を探してもらうようにしました。