昨日はドタバタとお騒がせいたしましたが、無事に引越しして喜んだのも束の間、今朝給餌するための継ぎ箱をしようとしたら、巣箱の中はもぬけの空でした。入居を確認し、私が出かけたあとで再び逃去したものと思われます。野生の神秘と畏敬の念を感じました。
さて、蜂飼いにとって厄介な事柄は数多くありますが、その中で最も謎が多いのが蜂児出しではないかと感じます。原因も、手立ても全く無いのが児出しで、大規模に始まったらどうしようもありません。今回私が講じた最後の手段は箱替えで、それはポチさんが日誌で発言されていたことを参考にチャレンジしてみたのですが、結果は逃去に終わりましたが、その工程でひとつ興味深い出来事がありました。
この写真は巢板を撤去した時に育児巣房が含まれる部分だけ保温保護し、ニワトリのヒナを温める加温ヒーターで18〜20度で加温して、蓋がけされたサナギを羽化まで養生する目的で作ったものなのですが、昨年スムシ食害で逃去したピザ窯で、残された巣脾にいたサナギを孵した時にも同じことをしました。連日かなりの数の羽化が見られ、出てきた蜂はエノキ群に合流させて行きました。今回もそのような蜂が出てくる可能性があり、加温養生しました。
もう3週間も児出しが続いていましたので、羽化できるサナギはいないだろうと予想していましたがやはり予想通り、翌日に1匹だけ羽化したのを最後に出てきてはくれませんでした。
幼虫はかなりの数残っていました。蜂パンを与えるわけにも行かず、そのまま死を待つばかりの状態でしたが、翌日におかしな現象を見つけました。幼虫が自分から巣房から出てきて、下に落下するのです。
卵から3日で孵化した幼虫は最初は巣房内で丸まって育ちますが大きくなってくると縦になり、巣房から顔を出して働き蜂から蜂パンを与えられて育ちますが、その蛆の最終段階、サナギになる直前の太った状態にまで育ったところで、自分から出てきて落下していく様を目撃しました。「児出し」と言うのは働き蜂が死んだ幼虫、もしくは病気にかかっている幼虫を選別し、群に対する影響を考えて抜き取って外に捨てると言われる現象ですが、今回のエノキ群では幼虫が自ら出てしまい、落下して、それを働き蜂が捨てに出ると言う繰り返しであったことが明らかになりました。出される幼虫が丸々と太って、中には動いているものもあり、これのどこが病気なんだろう?と不思議に思っていました。自分から出てきてしまう幼虫を、働き蜂たちはどんな気持ちで見ていたことでしょう?
蜂の幼虫はハエの幼虫のように自分で動き回って餌を探すことなどできません。ゆっくり身をのけぞらせることはできても、自発的に歩き回ることはできません。餌を与えられてこそ、生きて育っていくことができるのです。それを自分から放棄し、出ちゃったら生きられないことを知りながら、それでも出てきてしまうのはよほどその巣房の居心地が悪いからなのでしょう。
したがって、「蜂児出し」と言われますが。実はそうではなくて「蜂児出てきちゃう」と言うのが正確な表現かもしれません。では、なぜ出てきたくなってしまうのか、その原因は分かりませんが、作られたばかりの真新しい、真っ白な巣房で蜂児は健全に育ち、黒ずんだ古い巣房、何度も使われた巣房の使い回しは蜂児にとって良く無いのかもしれません。
今回の児捨ての引き金になったと思われる湿度過多の環境での蟻酸投与によって巣房の居心地が悪くなったのではないか。幼虫は健康だった、巣房が良くなかった、、、と言うのが私の印象です。
子育てで使われた巣房はそのまま花粉貯蔵に使われ、その後貯蜜に使われます。育児をするには清潔で新しい巣房を、下へ下へと作って行く。新巣房をガンガン作って行ける群は蜂も増えて行けるのかなと思いました。