農林水産省生産局畜産部 令和3年10月「養蜂をめぐる情勢」より
知多半島日本ミツバチ愛好会「2020日本ミツバチ飼育者実態調査」より
上記の農林水産省の「養蜂飼育戸数、蜂群数」の調査では、平成24と比較して令和3年は、飼育戸数が倍増しているにもかかわらず、平均蜂群数が減っているのは、養蜂法改正による趣味養蜂家の届け出数算入も、一因かもしれません。このように飼育者が増えるに伴い、一方で飼育を諦めて退場される方も少なくないと思っています。早い時期の飼育からの退場には、それなりの理由がありそうです。その理由を知ることも、反って飼育の継続に繋がるのではと考え、推理してみました。
■期待は、外れます。
新規参入者は、早期に蜜を得ることを期待しがちです。そのような期待は、しばしば裏切られます。日本ミツバチの飼育においては、時期や群れにより収穫につながらないことも多く、1~2年では、あなたの期待された量の蜜を、得られないかもしれません。
■少年老い易く、老年さらに老い易く、学成り難し
日本ミツバチは飼育が簡単で病気に強い。これは西洋ミツバチの飼育と比べてのことかも知れません。アカリンダニが日本国内で確認されて以降は、日本ミツバチ飼育が、より困難になったと実感しています。
飼育にかかる時間は、始めたばかりの頃の予想をはるかに上回ります。飼育に係るトータルの時間は少ないですが、時間を限っての、やるべきことは多くあります。また、仕事や家族の都合で、ミツバチに係る時間を確保できない場合もあります。日本ミツバチの飼育者は、比較的高齢の方が多く、高齢者にとって残された時間は、多くはありません。また、若いからと言って、決して長い余命と余暇が、保証されていません。
養蜂は、浅くとも広い分野の知識を必要とするような気がします。生物学、昆虫学、植物学等の基本や、統計的なものの見方、養蜂用具巣箱の作成や修理に必要な日曜大工程度の技術は、非常に役立ちます。初心者と経験者を問わず、必要かつ興味深い学習には、限りがありません。学習すればするほど、知らないことに気づきます。
■想定外も有ります。
ハチ毒アレルギーは飼育経験の長短に関わらず、しばしば突然発症します。 重症化した場合は、飼育の継続が困難となります。わたしの知り合いも、このことでドクターストップならぬ、ワイフストップがかかり、飼育を諦めました。
全国的にアカリンダニ症が広がっています。アカリンダニの防除処置をとらない限り、飼育群の平均余命は短くなります。私の周辺でも日本ミツバチの多くの養蜂家がアカリンダニで群れ失い、飼育をあきらめるのを見てきました。他の地域でも、アカリンダニに気づいてないだけかも知れません。
養蜂は、最初に思ったよりも費用がかかります。初期費用は、基本の用具だけで、それほどかかりません。その後に必要となる追加や交換用巣箱、ダニ防除剤、採蜜用器具等が追加され、費用負担がかさみます。
農業と同じように、養蜂は他の業より自然条件に左右されます。安定的に蜜量を確保することは容易ではありません。日本ミツバチの蜜の収穫量は、西洋ミツバチと比べて、はるかに少なく、趣味の養蜂家にとって労賃を原価に算入すれば、利益を上げるのは、ほぼ不可能だと思っています。
趣味の養蜂家に限らず、全ての養蜂家にとって、周辺環境の変化は厄介です。隣人にも注意が必要です。わたしは、苦情は無くとも、これまで2回ほど周辺環境の変化で、飼育場所を移しました。
参考
「HoneyBeeSuite.com」の 「なぜそんなに多くの新しい養蜂家が辞めるのか」
https://www.honeybeesuite.com/