ここのところピザ窯から半径10キロ圏内で待ち箱を設置するためにあちこちフラフラしているのですが、今日お話をした二人の男性との対話で1つのことが頭から離れません。
最初に隣村でニホンミツバチを10群飼育していた蜂友さんのところに様子を伺いに行きました。敷地300坪ほどの典型的な農家で広い庭には梅や松、槇などが植えられ、そこかしこに重箱が林立しています。今年はどうですかとの問いに少し落ち込んだ様子で「アカリンにやられて散々だよ、、、」と言います。聞くと昨年秋に強勢群が2群消滅、今年に入り2群がやられて、もうこれはダメだとのことでした。「勢いのある群ほど感染しやすい」とおっしゃっていました。巣門の扉を開けるとピンポン球大に団子状になって、苦しんでいました。4〜5メートルおきにそびえ立つ重箱が、これもダメこっちもダメと、見ていて胸が締め付けられました。「開けるとホラ、ちゃんとメントールの匂いがしてるだろ?効いてるはずなんだけどなぁ」との言葉に返すこともできず。。。
蜂友さんのところを後にし、次に伺ったのはセイヨウミツバチの養蜂をされている方の蜂場でした。グーグルの衛星写真で発見し、何度か訪ねてみたのですが誰もいなくて、今日はいるかもしれないと思って訪ねたのは今回が3度目でした。今日は作業をされていてやっとお会いできました。親父さんが終戦直後に始めた養蜂を継いで現在は多分70歳くらいでしょうか、この道40年、とても穏やかな方でした。ニホンミツバチを見かけることはないかとか、色々質問していたのですが、びっくりすることを彼が言うのです。
「蜂はあちこちで他の巣箱に出入りして居着いたりまた元の巣箱に戻ったりするからね」「ミツバチは他の群なんかに入ろうとしたら攻撃されてしまうのではないですか!?」すると「どうやらその辺はあまり気にしないで他の巣箱を行き来してると思うよ。証拠なんかないけど、見てると何となくそういうものだと私は思ってるよ、こっちの巣箱から出たと思ったら隣の巣箱に入っていくからねぇ」「そんなテキトーなことで良いんですか!」「私が適当な人間だから蜂に移ったかな(笑)ニホンミツバチだってそうだよ。他の巣箱に入っていくでしょ。うちの巣箱にも入っていくよ」「それは、盗蜜しに来てるのですかね?」「そうかもしれないね」
そして次の話題でまたまた驚きました。「ニホンミツバチは最近はめっきり減ってるけど、いっとき爆発的に増えたことがあったね。あちこちの村でみんなが飼育してた頃だな。そん時は民家に巣を作ったから撤去しに来てくれという依頼がたくさん来て困ったものだ」「もしそういう依頼が来たら俺に回してください!」「みんな病気になってやめちゃったのと同時に駆除依頼も減って、今はほとんど依頼は来ないけど、来たら連絡するよ」そんな会話をして帰って来ました。
蜂友さんの庭に置かれた巣箱が軒並み感染
ミツバチは他の巣箱にも行き来する
急に増えて、最近は減っている
このことを考えると見えて来ることがあります。同じ場所、至近距離で多くの群を飼育するとアカリンダニは一気に増えるということ。流行しても絶滅しないのは、森の中で生きているニホンミツバチは至近距離に、少なくとも4〜5メートルおきに営巣することは自然の中ではありえないこと。分蜂する群は自由にさせておくとなるべく離れたところに引っ越そうとすること。自分が病気になったら巣箱から遠ざかること。セイヨウミツバチ飼育者は定期的にアピバール を処方していること。(ヘギイタダニ駆除のついでにアカリンダニも駆除している)
古来から自分たちのルールにしたがってそれぞれの群が離れたところで暮らして来たニホンミツバチ。それは自然樹洞がそんなに連続して存在しないという環境があったから必然的に群同士は一定の距離を置いて暮らして来た。人間が飼育するようになって、同場所多群飼育が始まると感染が拡大してしまう。
このように考えると全てつじつまが合うのです。生意気なこと言ってすいません。