昨日、開催したマルシェのご縁から知り合う事になった奥様とお話をしていた時のこと。
現在、息子様がミツバチの研究をされていると打ち明けられた。論文発表も勿論されている。
お話しする時間をご好意で奥様がくださった訳だが、母親からの電話だと思って受け取った息子様は、まさか見ず知らずの養蜂愛好家と話す事になろうとは思わなかったであろうから、恐縮極まりない。
電話先からはカタカタとPCを打ちながら仕事をしている空気が漂っていた。(勿論、こちらからお話をしたいとお願いした訳ではないですよ〜)
平日の昼間といえば仕事中な訳なので、5分程度お話しさせてくださいとお詫びと挨拶を手短にして電話をする時間を頂いた。
突然のチャンスで、何をどう聞いたらいいのか整理できないまま、聞きたい事を伺った。
Q:日本ミツバチのアカリンダニ耐性獲得はやはり数十年ぐらいかかりますか❓
A:西洋ミツバチがアカリンダニ耐性獲得するのには何千年もかけて獲得しているので、今の状態では数十年先にというのは無理があると思います。ただ、アカリンダニに耐性を持つ個体の選抜育種を繰り返せば、耐性獲得は早くなると思いますし、不可能ではないですね。
Q:私の利用するミツバチのサイトでは、薬剤投与派も非薬剤投与派もどちらも日本蜜蜂の繁栄を心から願い、アカリンダニが憎く、どちらにもそれぞれの正義があり葛藤の中で養蜂をしているんですが…薬剤不使用で何か手立てはありますか❓
A:残念ながら、ありません。メントールは効きます。ただ、この使用においては自己責任の下、ハチミツの販売の規制云々など、使用にあたっては周知の通りだと思います。
Q:では、いつ頃、日本蜜蜂に有効なメントールなどの使用が認可される様になりますか❓
A:日本ミツバチに限らず、西洋ミツバチにも言えますが、国内においてミツバチの生む商業価値は低いとみなされているので、国がそこに予算を投じる可能性は現時点ではかなり低いです。そもそも、養蜂をされている方の届出が数字で見ても圧倒的に少ないですからね。アカリンダニが届出義務がある事はご存知かと思いますが、国としては「報告が少ないなら」となるわけです。
ですから、先ず皆さんにやっていただくべき事は、養蜂の届出や、アカリンダニ感染時の報告をちゃんとしていただくこと、これに尽きますね。
Q:地域によって家畜保健衛生所の指導内容にバラつき(メントール使用を勧めるところもあれば、それを控えめに言うところもあるし、使用はいけないと言うところもあるので)があるのは何故でしょうか❓
A:それは、たまたま担当したその家保の人間の考えで動いてますね。苦笑
国としての方針は決められている通りですよ。
Q:あくまでも推測ですけど、アカリンダニの大きさってとても小さいですが、それがいくら冬場に密集しているからと言って、水平感染する事って可能なんでしょうか❓個人的に移動速度や移動時間を考えると、同じところとは言えゴソゴソと動いているミツバチに水平感染するのは無理な様な気がしてしまうんですが。
A:あなたが思っている以上に、特に冬の巣の中は密集しています。そして、水平感染は間違いなく起こっています。冬場のミツバチの気管が真っ黒になってるのは冬季のミツバチの寿命は長い為、気管が詰まるまでアカリンダニが繁殖出来るわけです。逆に、夏場などの寿命は短いので、気管が詰まる前・症状が軽く動ける力があっても、先にミツバチの方が寿命を迎えるのでアカリンダニがそこまで気管に詰まらないし、冬程増えないんです。結果として、夏場は感染に気がつきにくいとなりますね。
電話はここで終わり。
重ね重ね、感謝をお伝えして、また何か聞きたいことがあった時はよろしくお願いしますとお伝えした。
奥様の前で、少し泣いてしまった。
嬉しくて。
…他にも重要な事を聞いた思うけれど、思い出して書けるのはこのぐらい。
私がもっと頭が良かったなら、ミツバチ研究者の方にもっともっと鋭く真に迫った事を聞けただろうに。
電話を切ってから「メントール使用が生命の進化に影響を与える可能性の有無について聞けば良かった」とか「気管から出たアカリンダニを払い落とすのに有効な事はありますか」とか頭に浮かんだ。
悔やんでも仕方がない。これは私1人で抱えずとも、質問コーナーで皆さんから言葉を頂いて質問とその答えを共有しようと思った。
そして、奥様からも、また聞いてあげると暖かくもご協力いただけると言われた。
ミツバチマルシェが紡いだご縁に感謝だ。
奥様は息子様のことをミツバチの研究に於いては権威があると仰っていたので、その方に迷惑が掛からないようにしつつ、このご縁から少しでも日本ミツバチの為に有用な情報や知恵、アドバイスを乞うていきたいと思う。
日本ミツバチの研究者様と電話越しの濃厚な時間。運命は廻る。
私が生きている内に見届けられなくても、日本ミツバチに明るい未来を残せたらと思う。
蜜源植物を大いに増やそう。
少しでも日本ミツバチが気にいる宿を置いてみよう。
今度、耐性獲得や進化の過程で、メントール投与が無害だという言葉が聞けたなら、その時は、私はメントールを使おうと思う。
勿論、その際には自己責任かつ自家消費のみに留め、決してハチミツ販売は行わない。
そして、同時に、薬剤以外でも日本ミツバチ本来の自助能力を高められる物や手段を模索し続けようと思う。
このサイトでの皆さんの日誌から、アカリンダニをメントールで完全に殲滅する事は出来ないと学ばせてもらっている。
数匹でも一匹でも、アカリンダニが寄生していれば、それはやはりキャリア群れなのだ。
日本ミツバチという固有種の存続と引き換えに、キャリアの存続もやむを得ず許す事は、私にとって新たな苦悩と葛藤の始まりになるだろう。
多くの方が既にそうである様に。
出来る事からコツコツと。
少しでも、養蜂の届出とアカリンダニ感染時の報告義務が徹底する事、その意識が当たり前の感覚になることを心から願う。