南の越冬地から、北方の高地や高い山の繁殖地に向かう春の渡りの上りのアサギマダラが、植えている海浜植物のスナビキソウに来ました。
海とアサギマダラは、なかなかイメージでつながりにくいですが、渡るので当然海の上を飛んでおり、この時期浜辺に咲くスナビキソウに非常によく吸蜜に訪花します。まだ他に花が少ない時期である事もあるのでしょうが、他の花よりは明らかにこのスナビキソウを好んでおり、その誘引力は、もしかしたら秋のフジバカマよりも強いかもしれません。
この春の上りのアサギマダラは、秋に比べると非常に数が少なく、秋に100頭単位で見られる場所でスナビキソウを植えても、1日訪花する数は1~3頭ほどです。しかしやはりアサギマダラの渡りの主要なルート上でスナビキソウが群生する浜辺では数が多く、秋のフジバカマ並みに集まる場所もあります。それでもタタミ1畳ほどに増えれば、山の中に植えてもこのスナビキソウには寄って来る事があります。でも秋より極めて少数なのは、前述したとおりです。
昨年夏にNHKの「みんなのうた」でこのスナビキソウが歌になり取り上げられたため、最近このスナビキソウも知名度が高いです。
https://www.nhk.or.jp/minna/songs/MIN202108_02/
しかし近年の砂浜の減少から、スナビキソウはどこでも絶滅が危惧される種類に含まれており、中には宮崎県などすでに絶滅している県もあります。太古からこの時期砂浜に咲くスナビキソウをあてにして渡ってきた上りのアサギマダラも、困っている事だろうと思います。
海浜植物なので乏水地でも大丈夫で乾燥にも強いので、他の植物が植えられないような場所に植えて、春の上りのアサギマダラを呼んで楽しんでいます。アサギマダラが好んで吸蜜するので蜜はあるはずなのですが、これまでミツバチの訪花は見た事がありません。もし訪花するようでしたら、花期も長く乾燥地での良い蜜源になるかもしれないとも思っていますが、スナビキソウの蜜には毒物のアルカロイドが含まれており、それを(交尾のためのフェロモン分泌のためと天敵からの防衛のため)体内に取り込む事がアサギマダラが好んでスナビキソウに来る目的であると考えられているので、スナビキソウの蜜の量が増えるのは、好ましくないことかもしれません。
上りのアサギマダラは、スナビキソウ以外でも野菜の花などにも訪花しますが、やはり白く可憐なスナビキソウの花への訪花が、一番絵になると思います。アサギマダラは、今から3週間ほどの間ポツポツと訪れますが、無事に繁殖地に到着してそこで数回繁殖を繰り返し、秋にはまた大勢でフジバカマを訪花してほしいと、旅の無事を祈りながら見送っています。