少し長くなってしまうかもしれませんが・・・
私は昨年4月に千葉県佐倉市から千葉市に拠点を移しました。仕事場の引越しだったので人生最大のプロジェクトでした。やっと見つけた新天地へ期待したのが「ミツバチがたくさん生息している場所」であるのは言うまでもありません。引っ越すまでに2年の準備期間があったのですが、その間何度も足を運び、ミツバチの生息状況を調査しました。やり方は3つ、①訪花の有無、②蜜蝋加熱蒸散、③待ち箱設置(ルアー設置)です。
ところが最初の1年間で、一度も、1匹も見つけることができませんでした。森や田畑があり、古い部落や社寺が点在する里山の風景にも関わらず1匹も見ない。理由として考えられるのはアカリンダニと農薬です。村の人々の畑を訪ねて農薬をどのように使っているかの聞き取りも行ったのですが、佐倉と変わらない普通の営みでした。考えられる理由は一つだけ、アカリンダニでその地域が絶滅したのだと思いました。蜜源植物がこんなにたくさんあるのに蜂がいないなんて、植物たちはさぞ淋しかった事でしょう。残された道はただ一つ。佐倉市→千葉市18,9kmの群の移動でした。私はアカリンダニ感染のリスクから群の移動は反対の考えだったのですごく悩みました。新天地の調査と並行して、移動する群にいる蜂たちが感染していないか、これも1年の歳月をかけて慎重に観察しました。
私が管理する蜂場は直径20キロ圏内に点在していて、各蜂場1〜2群を飼育しているのですが、これまでに一度もアカリンダニの症状が出たことが無い蜂場に置かれた2群のうち、どちらか元気な方を持って行く事とし、自分の引越しに先駆けて1年前に群を移動しました。アカリンダニトラップの設置と時騒ぎ時に徘徊が見られるかどうか、そして顕微鏡での自己診断も毎月行い、この群なら大丈夫と判断して移動、移動後も症状が出ていないかの観察を続けました。結局その群は健全に育ち、無事越冬し、分蜂もして、巣箱を引き継いだ末娘群は逃去しました。
自分の引越しを終えて昨年の8月1日に、庭に設置してあったピザ窯に強勢群の入居がありました。(詳しい内容は定期的に日誌に書いてます)春に分蜂した群、おそらく第一分蜂が夏分蜂として帰って来てくれたのだと思いました。ちなみに昨年の入居は拠点の庭に2群、(ピザ窯含む)300メートル離れた地主さんの畑に設置した待ち箱に2群、部落に4群の入居がありました。
群を移動してからは村のどの花にも訪花が見られ、それは劇的な変化で、ゴーストタウンだったこの村を復活させたと喜んでいました。
ところが1ヶ月後、ピザ窯で大規模な徘徊が突然始まりました。この群がうちから出ていったものである証拠はありませんが、元巣から旅立って行った4月後半から3ヶ月後のことでした。
仮にこの群が前年度の私の群由来の群と仮定しますと、アカリンダニが発症した理由は2つ。ひとつは分蜂先でもらった、もうひとつは元々(佐倉方面から持ってくる前から)罹患していた。・・・と言うことです。
私の人為的な行為、感染している群を他所に持ち込んだのかもしれないと考えると身体が震えて来ます。いくら頻繁に検査しても、感染率ゼロ%と確信するには全ての蜂の頭を飛ばさない限り無理です。そしてもうひとつの理由、1年間調査してこの地にはミツバチがいないと思っても、実は細々と感染群が生き延びていた、この事実も、アカリンダニのしぶとさに恐怖で身体が震えます。いずれにしてもアカリンダニは一度感染したら消えることは無い、恐るべき強さを持っている事は確かです。絶滅しかかっている地域に健全群を移入することによって、せっかくクリーンになりかけていたのに追加の燃料を投下し再燃させた可能性もある。負の連鎖です。
・・・・・アカリンダニで蜂が消えたこの村を復活させるなどと言うのは詭弁で、正直なところは自分がミツバチと暮らしたいと言う欲のために巣箱を持ち込んだと言うことです。
ひとつだけ、確かに言えることは、2年前移動のために選んだ群が住む蜂場は、今でも感染は確認されていません。奇跡的にアカリンダニに汚染されていない地域があるとしたら、これは宝です。この楽園に、絶対に群を持ち込んではいけない。
今飼っている群に薬を処方してダニを減らす努力は継続していくしか無いと思いますが、感染未感染に関わらず、人為的な移動はデメリットしかない。もし誰かにミツバチを飼いたいと相談を受けたら、待ち箱の入居率を少しでも上げるためのアドバイスをしたいと思っています。
外来種の侵入の話はニュースでも頻繁に目にしますが、一度入れてしまうと消すのは不可能に近いと言うのが生命の凄さ、逞しさであり、ミツバチを通して多くのことを学ぶ機会を与えられていることに感謝しています。見ていて気分が良くなる動画ではありませんが、参考になる動画をご紹介します。