ワイパーに溜まった濡れ落ち葉を退けてエンジンをかけ、外界へと続く森の一本道をゆっくり進んでいた時のことです。濡れた林道の轍と轍の間に1羽の鳥がいることに気づきました。サギに似た中型の鳥、鳩よりも大きく、ゴイサギよりも少し小ぶりな鳥でした。さらにゆっくり、歩くよりもゆっくりと距離を詰めるように進んだら、戸惑いながらこちらを気にしてトコトコと歩いて行き、それは道案内してくれているようでした。しばらく先導してくれたあとに、トットトと3回地面を蹴って、切れ味鋭い風切り羽根を滑らかに羽ばたかせながら高いイヌシデの枝にとまった瞬間に、私はそれがミゾゴイであることを確信しました。ミゾゴイは身体を細く首を伸ばして枝に擬態する習性があるのです。暗い森だったから見ずらかったけど、確かに首から胸にかけて黒い1本の縦線が走っていました。
秋も深まってきて、そろそろ南へ旅立つ準備をしなければなりませんね。一説によるとミゾゴイは世界で1000羽くらいしかいないほど激減していて、絶滅危惧II類 (VU)に指定されています。春の夕刻にパートナーを呼ぶ時の物悲しい声を聞くと、もうすぐいなくなる寂しさを訴えているように聞こえます。無事に南の島に到着して、イタチにも気を付けて頂きたいです。
ミゾゴイの寂しげな鳴き声はコチラ